元NPB審判員の記者が考える「フレーミング」ミットは動かすべきか…中日4位・味谷のお手本は谷繁氏

[ 2021年11月22日 09:00 ]

味谷大誠捕手(撮影・柳内 遼平)
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 近年、捕手の捕球に関して「フレーミング」という言葉が野球界に定着してきた。際どい投球を「ストライクにするための技術」や「ボールにしないための技術」などとも言われるが、私の過去の役職もふまえ、ここでは「捕球後にストライクゾーンの中心方向に向かってミットを動かす行為」と定義したい。

 11年から16年までNPB審判員だった私は、大きな動きの「フレーミング」は逆にストライクゾーンを狭めてしまうと感じていた。若手の同僚やベテラン審判員も同意見だった。

 球審は、投手のリリースから捕手の捕球まで顔を動かさずに目だけで軌道を追う「トラッキング」という方法で、投球がストライクゾーンを通過しているかを判断する。ジャッジの直前に捕手が大きく「フレーミング」すると、球審の目には「捕手が“ボール”と思った球を“ストライク”に見せようとミットを動かした」と映ってしまい、判定は「ボール」になりがちだ。むしろ際どいボールこそ、ミットは極力動かさずに「捕った所で止める」方がストライクとコールされやすい。

 中日からドラフト4位指名を受けた花咲徳栄・味谷(みや)大誠捕手(3年)に取材する機会があり、「フレーミング」に関して尋ねた。味谷は球審が「ストライク」とコールしやすい「捕った所で止める」スタイルだ。きっかけは今夏までエースを務めた松田和真投手(3年)からの要望だった。「ミットを動かすと、投げた球がどう動いているのかわからない。ミットを止めればボールの修正もやりやすいと言われました」と振り返る。

 そんな味谷は「スタイルが似ている。キャッチングの参考にさせてもらっています」と元中日・谷繁氏をお手本にする。谷繁氏の現役時代は「捕った所で止める」タイプの捕手で、私が接した審判員からは「球界一、捕球がうまい」と評判だった。現役選手では阪神・坂本が際どいボールもしっかり止めて「ストライク!」のコールを呼び込んでいる。

 プロの世界に飛び込む味谷には谷繁氏や坂本のように「ストライク!」を量産し、子どもたちのお手本となる捕手になってほしい。(記者コラム・柳内 遼平)

 ◇味谷 大誠(みや・たいせい)2003年(平15)6月14日生まれ、大阪府和泉市出身の18歳。小5から野球を始める。郷荘中では大阪和泉ボーイズに所属し一塁手や外野手としてプレー。花咲徳栄で捕手に転向。甲子園出場なし。1メートル80、84キロ。右投げ左打ち。

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