【新井さんが行く!】オリックス25年ぶり優勝へ 「16年広島」と重なるチームの勢い

[ 2021年10月5日 05:30 ]

新井貴浩氏
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 優勝するときは忘れられない試合が必ずある。“あの試合”が大きかった…とチーム全員で共有する記憶だ。オリックスがロッテに3連勝した先週の直接対決。第3戦は9回2死から2点差を逆転した。優勝すれば、語り継がれる勝ち方だ。

 T―岡田は若い頃からレギュラーになり、5年目で本塁打王。ファンや球団の期待をずっと背負い、苦しんだ時期もあった。チームの低迷も知っている。そんな彼が打った逆転弾だから士気も上がり、25年ぶりの優勝が見えてきた。16年の広島で同じ「25年ぶり」を経験したからだろうか。随所で当時の広島と重なって見える。

 エースは山本でも、投手陣の精神的な支えは平野佳だと思う。同じメジャーからの復帰で大黒柱だった黒田さんに近い。球に食らいつき、塁に出てかき回す福田と宗の1、2番は広輔(田中広)とキク(菊池涼)のよう。エルドレッドのように体の大きな大砲・杉本がいて、上本のようなムードメーカーは大下だ。中継でもベンチからの声が本当によく聞こえる。宮城や紅林ら若手がベテランと融合し、チームが底抜けに明るい。

 忘れてはいけない人物もいる。昨季まで広島にいたヘッドコーチの水本さん。オリックスでは「新井を育てたのは俺だ」と話しているとか(笑い)。パ・リーグの野球は初めてなのに1年目から優勝争い。毎日充実して、ハラハラしているはずなのに、体重は減っているように見えない。

 残念なのは打線の中核を担う吉田正が骨折で再離脱したことだ。足の故障から懸命に戻ってきたばかりだったから、心情を思うと胸が痛い。最後まで戦えず、彼の中では言葉にならないほどの喪失感があるかもしれないが、貢献度の高さは何も変わらない。復帰を間に合わせたから、ロッテ戦の3連勝もあった。それはチームメートが誰よりも分かっている。

 16年の優勝ではファンの方が涙を流すほど喜んでくれたのが何より幸せだった。オリックスと争うロッテも05年は2位でプレーオフを勝ち抜いた優勝だから、レギュラーシーズン1位なら47年ぶり。どちらが勝っても、長く待たせたファンの思いに応える優勝になる。(スポニチ本紙評論家)

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2021年10月5日のニュース