【内田雅也の追球】「フォークのお化け」に惑わされた? 直球に凡飛10本の阪神打線

[ 2021年4月29日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-6中日 ( 2021年4月28日    バンテリンD )

<中・神(5)>6回2死、大山は中飛に倒れる(撮影・坂田 高浩)
Photo By スポニチ

 8回表、1点差としてなお1死一、三塁、ジェリー・サンズ遊ゴロ併殺打には確かにため息が出た。ただし、サンズの併殺打は今季2本目と少なく、併殺を避ける打撃ができる打者だ。この時も又吉克樹の内角シュートを狙い、三遊間に放ったが、相手が上回った。

 阪神の敗因はやはり、中日先発・勝野昌慶を打てなかったことだろう。7回2死まで無得点で3勝目を献上した。

 象徴的だったのは5回表から7回表2死まで連続8人がフライアウトに倒れた打撃である。他にも2本あり、フライアウトは計10本。うち9本が直球を打ち上げていた。

 作戦上の機密事項なので推測になる。首脳陣は勝野攻略へ、低めを捨てる意味で「ヒッティングゾーンを上げろ」と指示していたと思われる。得意球フォークへの対策である。

 共同通信データサービス「TSUBASA」によると、勝野は今季過去4試合で計338球を投げ、うちフォークは103球(30・4%)と直球153球(45・2%)に次いで多かった。ただ、多くはボール球で、手を出せば術中にはまる。

 追い込まれれば、フォークにも対応しなくてはならないが、それは至難の業だ。バットコントロールのいい糸原健斗、梅野隆太郎がともに2打席連続三振した結果球はすべてフォークだった。

 各打者は懸命にフォークを見極めようとしていた。そしてストライクを取りに来る直球を早いカウントから狙い打ったのだ。ところが、140キロ台中盤の直球にバットが押されていたのである。結果、フライアウトが目立ったわけだ。

 かつて、阪神監督当時の野村克也が「フォークのお化け」と言ったことがある。「お化けや幽霊も“出るぞ、出るぞ”と思っているうちが一番怖いだろう。幽霊の正体見たり、枯れ尾花……」

 フォークが「来るぞ、来るぞ」と意識するうちに直球に差し込まれていたのかもしれない。

 「フォークを捨てる」と考えてしまってはフォークを意識することになる。「直球を狙う」という積極思考が正解だろうか。打者心理とはかくも難しい。

 名古屋に来て1点、1点と得点力が減退している。打撃は水物で好不調の波があるものだ。

 一方、守りでは、糸原が一、二塁間のゴロをさばき(2回裏)、バックアップで打者走者の二進を阻止(5回裏)するなど好守も見られた。サンズのランニング捕球(4回裏)もあった。凡ゴロや凡飛でも打者走者は力走を怠っていない。

 守れ、走れているうちは大丈夫である。ナイターで連敗した後、きょう29日はデーゲーム。早い気持ちの切り替えが必要だろう。=敬称略=(編集委員)

続きを表示

2021年4月29日のニュース