巨人・石井琢朗コーチ 最後の一人が帰るまでグラウンドに立ち続けた背番号89

[ 2021年2月19日 09:00 ]

<巨人沖縄キャンプ>早出特守をする吉川。右は石井コーチ (撮影・森沢裕)
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 沖縄セルラースタジアムが報道陣に開放される午前8時30分。グラウンドには必ず巨人・石井琢朗野手総合コーチ(50)の姿があった。亀井、菅野らベテランと主力中心のS班キャンプで1日おきに早出練習を行った小林と吉川をマンツーマンで指導。全体練習後には陽岱鋼ヨウダイカンも含めた3人の居残り特打の打撃投手も務めるなど、とことん選手の練習に向き合っていた。

 「(小林)誠司の“今年は死に物狂いで”というコメントがあったので、とことんこっちも死ぬ寸前くらいまでやらせてあげようかなと」。昨季は2度の骨折もあり出場わずか10試合に終わった小林の思いをくみ取りバックアップ。「力があるので、どうしてもスイング自体が大きくなってしまう」と課題を分析。中堅から右方向への打撃を徹底させ、映像を一緒に見ながら、体の近くから出すスイングをつくっている。レギュラー定着を狙う吉川には課題の打撃向上へ、バットの出し方を細かくアドバイスしている。

 通算2432安打、4度のゴールデングラブ賞に輝いた実績を持つ石井コーチ。指導者としても、17年にリーグワーストのチーム打率・234だったヤクルトの打撃コーチに就任し、翌18年にリーグトップのチーム打率・266まで引き上げた実績がある。

 自身が持つ豊富な引き出しを、余すところなく選手に還元。長さ約1・5メートル以上ある棒を使ってのスイングや、「置きティー」を使って当たるポイントでバットを止める練習など、時に見本を見せながら助言を送る。5年契約最終年で「後がない。生きるか死ぬか」と悲壮な思いで挑む陽岱鋼は「自分のバッティングを何か引き出そうとしてくれている。毎日勉強になる」と、さまざまな角度からの教えに感謝の思いを口にした。

 ノッカー、打撃投手、ティー打撃のトスなど自ら務め対話する。「そう!今の!」などと声をかけながら練習のサポートをする姿はS班の恒例となっていた。選手の能力を最大限引き出すために最後の一人が帰るまで、グラウンドに立ち続けていた背番号89の思いに、選手は必ず応えてくれるはずだ。

 16日に宮崎でキャンプを行っていた1軍本隊が合流して始まった、那覇での本格的なサバイバル。小林、吉川、陽岱鋼のアピールに期待したい。(記者コラム・小野寺 大)

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