八戸西 県勢初の21世紀枠でセンバツ 小川監督男泣き「ホッとした」

[ 2021年1月30日 05:30 ]

雪が積もったグラウンドをランニングする八戸西ナイン(撮影・沢田 明徳)
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 第93回選抜高校野球大会(3月19日から13日間、甲子園)の選考委員会が29日、初めてリモートで行われ、出場32校が決まった。昨年はコロナの影響で中止となり令和初のセンバツ開催。昨秋の東北大会8強の八戸西は、青森県勢では初めて21世紀枠で選出された。特別支援学校との交流などグラウンド以外の面も評価され、春夏通じて甲子園初出場。エース右腕福島蓮投手(2年)を中心に聖地1勝を狙う。組み合わせ抽選は2月23日に行われる。

 ボールは一つ一つ、丁寧に白いテープで巻かれていた。八戸西(青森)ナインは感謝の思いを込めてティー打撃を行う。県勢初の21世紀枠でのセンバツ出場。発表後も早速、室内練習場で「絆のボール」を打ち快音を響かせた。

 「地元の方の応援、期待を感じていた。ホッとした気持ち、頑張らなければ…という気持ちです」。小川貴史監督は選手に報告する際、感極まり思わず大粒の涙を流した。昨秋の青森大会は準優勝、東北大会は8強。好成績はもちろん、同じ八戸市内にある八戸高等支援学校との温かい交流が、聖地につながった。

 「障がいがある子、パラリンピックを目指す子らに勇気を、という思いでやっていた」と小川監督。交流は19年4月にスタート。同校産業科の生徒らとのスポーツ交流会などを実施してきた。その中で生まれたのが「絆のボール」だ。傷んだ硬式球を支援学校の生徒がテープで巻き、再び使えるようにしてくれる。室内練習場に積み上げられた数は約5000個。宮崎一綺(かつき)主将(2年)は「支援学校の方々のおかげで打撃が向上している。出場を伝えたい。支えてくれた方々、その人たちの思いも背負って勝利で恩返ししたい」と誓った。

 全員が地元・青森出身の公立校で、チームのモットーは「明るく、礼儀正しく、格好良く」。雪が積もるグラウンドでランニングを行う声は明るく、朗らかに響く。身長1メートル89の長身右腕で、最速143キロのエース福島蓮(2年)は「冬の練習で下半身が強くなった。目標は150キロ。勝てる投手を目指す」と力を込めた。

 10年前の東日本大震災では八戸も被災。現在は誰もがコロナ禍に苦しむ。「元気よく、勇気を与えられるような野球。ひたむきなプレーをしたいですね」と小川監督。絆、を胸に――。極寒の青森の地から、春の甲子園で旋風を巻き起こす。(鈴木 勝巳)

 ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるため01年に導入。練習環境などのハンデ克服や地域貢献など、戦力以外の要素も加味する。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に、全国9地区から1校ずつ候補校として推薦。今年は昨年の明治神宮大会が中止となり神宮枠がなくなり、21世紀枠が1校増えて史上最多タイの4校選出。東(北信越、東海以東)、西(近畿以西)から1校ずつ、残り7校から2校を選んだ。最高成績は01年の宜野座(沖縄)と09年の利府(宮城)の4強。

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