新井貴浩氏 この痛みが未来で立ち向かう力になると信じて…大変な経験をした子供たちは人に優しい大人に

[ 2020年5月5日 08:30 ]

新井貴浩氏
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 【新井さんが行く!】こどもの日だから、本当は楽しいことを考えたかった。インターハイの中止などで目標を奪われた中高生たちの心情を思うと胸が痛い。特に最上級生にとっては最後になるはずの舞台だった。言葉で言い尽くせない悔しさや悲しさ、怒り…。いろんな負の感情を抱くのは当然だと思う。同じ経験をしたことがないから、軽々しいことは言えない。我慢しろ、なんてことは簡単に言えない。若いうちの苦労は買ってでも…と言うけど、こんな苦労は誰も買いたくない。いまの大人たちも、ほとんどが経験していないことだ。

 例えとして適切かどうか。叩かれた痛みは叩かれた人しか分からない。痛みを知れば、同じようにつらい境遇の人の気持ちが分かるし、いたわることができる。こんな大変な経験をした子供たちは、きっと周りを思いやれる大人になれる。人に優しい大人になれると思う。

 これから進学するにせよ、就職するにせよ、大人になって社会に出たら、理不尽なことに直面することがある。むしろ思い通りにいくことの方が少ない。そんな時、この経験を思い出すかもしれない。立ち向かう力になるかもしれない。もしそうなら、いまの苦しい時間は決して無駄にはならない。

 高校野球の夏の地方大会は早いところで来月から始まる。何も野球だけを特別扱いに…ということではない。ただ、球児たちは既にセンバツ中止という痛みを味わった。いま高野連の関係者の方々は、知恵を出し合い、いろんなことを想定して尽力していると思う。子供たちのために、やれることは全てやってあげてほしい。

 いまの状況を考えれば、難しい判断を迫られる。前例のない事態だから、100%の正解はない。何をやるにしても、一定の批判は出てくると思う。だからこそ、批判を避けるため…の判断はしてほしくない。むしろ球児たちを守るために、起こり得る全てのリスクを引き受け、全ての批判を受け止めてほしい。子供たちのために汗をかいてほしい。それが大人の責任だから。

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2020年5月5日のニュース