コロナ禍で不透明なドラフト 高校球児が早い段階で“別の道”決断する可能性も

[ 2020年5月5日 09:30 ]

新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が不安視される夏の甲子園
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 プロ野球12球団のスカウトが困り果てている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、高校、大学、社会人とアマチュア野球の大会はことごとく延期か中止に。外出自粛で自宅待機を余儀なくされている、ある在京球団のスカウトは「行くところもなければ、やることもない。いろいろと模索しながらイメージはしているけれど…」と悶々とした日々を過ごしている。

 高校でいえば、例年なら各都道府県の春季大会に関東、近畿など地区大会が開催される時期だ。大学も春季リーグ戦が行われていたはずだが、どこからも球音は聞こえてこない。スカウトも足を運ぶ現場がなければ、球団内で共有する指名候補選手の資料も作れないという。この事態が続けば、11月5日に予定されている今年のドラフト会議はどうなるのか…。現場からは不安の声が聞こえてくる。

 無観客での開催も視野に入れている今夏の甲子園大会が、仮に中止になるようなことがあれば、その影響の大きさは計り知れない。スカウトは8月の本大会はもちろん、各地方大会も視察ができない。ひと冬越えて高3になり、春から夏にかけて大きく成長する選手は数多い。前出のスカウトは「下級生の時からパフォーマンスを発揮して、こちらがずっと見ている有力選手はともかく、春から夏にかけて出てくる選手も必ずいる。その存在が未確認になってしまう」と危惧する。

 その結果、ドラフト会議での指名人数が「減る可能性も出てくる。現時点でもリストを増やせていないので…」という。即戦力など1、2位の選手とは別に、将来性などに期待する中位、下位指名の選手が影響を受ける可能性が大きい。選手の側もアピールの機会がなくなれば、プロ志望届を提出しづらい。プロに行けるか不安になった場合は早い段階で大学、社会人に進むケースも出てくるだろう。

 野球界にとっても異例ずくめの2020年。今秋のドラフト会議で指名されなかった高校生は大学、社会人に進み、3~4年後のドラフト会議で上位指名される――というパターンも生まれるかも知れない。風薫る5月。プレーする選手やファンだけではない。アマチュア選手の成長を見届けたい各球団のスカウトも、再び球音が響く日を一日千秋の思いで待っている。(記者コラム・鈴木 勝巳)

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