一日一日の闘い…清原和博氏の重い言葉と覚悟

[ 2016年12月31日 10:00 ]

清原和博氏
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 【鈴木誠治の我田引用】元プロ野球選手の清原和博氏が、覚せい剤取締法違反で逮捕されてからでは初めてインタビューに応じ、12月24日付のスポニチに掲載された。29日にはTBSでも放映され、赤裸々に薬物に依存していった様子を明らかにした。

 スーツをしっかりと着込み、整えた頭髪と、ひげのない顔。「二度と(薬物に)手を出さないとは言えない。そう言い切れるのは、最後、自分が死ぬ時。あいつに勝ったぞと、笑って寿命を終えたい」との言葉と表情からは、真剣に、覚悟をもって薬物と闘っている日々がうかがえる。

 人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?

 平野啓一郎氏の小説「マチネの終わりに」に出てくる言葉だ。今を真剣に生きれば、過去の事実は変えられなくても、過去が違う色に見えてくるかもしれない。

 「清原さんは、そう思って頑張ってほしいね」

 女勝負師のスゥちゃんに話し掛けると、あっさりした答えが返ってきた。

 「まぁ、そんなことを考えるのは、男だけじゃないの」

 どういうこと?

 「大抵の女は過去を考えてない。防衛本能が強いからかどうか、わからないけど、今と未来を守ることしか、考えない。過去がどうだったかに、あまり興味がないと思うわ」

 だから、清原氏の過去を非難するつもりはないという。今を一生懸命に生きてほしいと。

 男だからなのかどうかはわからないが、清原氏は過去に押しつぶされてしまったのかと思う。栄光に包まれた現役時代の輝きは、引退後も続くわけではない。加えて、野球界で生きていく道が見えなくなり、自ら入れ墨を入れて、その道を絶ちきってしまった。家族との別れが決定打になり、薬物にのめり込んでいったようだ。

 未来は、かつてのような未来ではない

 迷言で知られるヤンキースの元名捕手、ヨギ・ベラ氏の言葉として知られるが、出典はフランスの詩人、ポール・ヴァレリー氏の言葉だ。

 清原氏は引退後、未来を見失い、今をも見失った。かつて夢見た未来と今見える未来。その景色は刻々と変わるけれど、未来から見る過去の景色も、変わることがある。わたしたちは今を一生懸命、生きることしかできないのかもしれない。

 過去を悔いず、糧にしようともがくことなく、未来への道を探さず、ゴールも設定しない。ひたすら、今を生きる。過去が変わったと思うのも、未来の景色が変わるのも、意図できるものではなく、今を生きた結果なのだろう。インタビューでは、清原氏の次の言葉が最も心に響いた。

 「一日一日の闘い。きょうは勝ったぞ、あすも頑張ろうという毎日の積み重ねです」

 現役時代の清原氏は、そうやって日々を過ごしていたはずだ。

 頑張ってほしい。

 ◆鈴木 誠治(すずき・せいじ)清原氏の1歳年上の元野球少年。高校時代、甲子園でPL学園や池田高校を見て興奮し、1987年の西武−巨人の日本シリーズ第6戦では、清原氏が9回に突然、涙を流したシーンも目撃した。

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2016年12月31日のニュース