成長著しい筒香 元同僚「三冠王獲る」恩師は「ほとんど言うことない」

[ 2015年4月14日 09:00 ]

開幕から好調をキープする筒香

 開幕直後から快打を連発し、首位タイを走るDeNAの四番に君臨する筒香嘉智外野手(23)。入団時から「ハマのゴジラ」と呼ばれ、将来を嘱望された大器が、6年目にしていよいよ日本を代表する大砲になりつつある。筒香は何が変わったのか。

 今年の2月、元DeNAの選手で現在はライターとしても活動している高森勇旗さんがこんなことを言っていた。

「ちょっと予言していいですか。今年、筒香が三冠王を獲ると思います」

 シーズンオフの取り組み方や言動から「筒香は別次元の選手になる」という確信めいたものがあったようだが、「さすがにまだ早いのでは?」と思った。しかし、開幕からの活躍を見る限り、気は早いが高森さんの予言に現実感を覚えてしまう。

 ボール球を悠然と見送る姿に風格すら感じる。「見逃す」ではなく、「見送る」という表現がはまる。相手投手からしてみると、たとえストライクを取れたとしても、筒香のようにじっくりとタイミングを取って見送られたら、「甘く入ったらやられる」と不気味な危機感を覚えるに違いない。それは、ここまで15試合で12四球という数字が物語っている。

 「今年の筒香は間が取れるようになって選球眼がよくなったし、変化球にも対応できるようになったね」

 そう語るのは、横浜高校時代の恩師・小倉清一郎さんだ。いつも辛口な小倉さんだが、今年の愛弟子の活躍ぶりには、「すごいね。ほとんど言うことがない」と手放しでたたえる。

 筒香が高校2年だった当時、小倉さんは筒香について、こんなことを言っていた。

「筒香はねぇ、打球に『角度』がないんだよな。鈴木尚典(元横浜)もそうだったんだけど、パワーはあってもライナー性の当たりばかりで、意外にホームランが少ない」

 その言葉がずっと気になっていたのだが、小倉さんによると「プロに行ってからボールの下っつらを叩けるようになって、打球が上がるようになった」という。ボールのやや下側を打つことで打球にバックスピンがかかり、角度と伸びが出るようになったのだ。

 一方で、小倉さんはこんな不安も口にしていた。

「タイミングを取る時に、右肩が一瞬落ちるのが気になるね。右肩が落ちる動きと連動してバットのヘッドがピッチャー側に少し入ってしまう。この動きがあると、インハイ(内角高め)の打ち損ねが増えると思う。インハイはホームランを一番稼げるコースだからね」

 ただ、この右肩がわずかに落ちる動きは始動のきっかけにもなっているように見えるため、矯正するにはデリケートな調整が必要だろう。そして小倉さんは筒香の練習に取り組む姿勢についてもこう語った。

「高校時代はティーバッティングより『素振り派』だったね。ティーはペアを組むから孤独感はないし、実際にボールを打つことで気が紛れる。でも素振りは1人だし、自分のスイング音を聞くくらいしか楽しみがない。これはつらいんだよ。でも筒香は素振りで自分を追い込むことができていた。本当によく練習していたよ」

 2017年に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。侍ジャパンの四番に座っているのが筒香であっても、もはや誰も驚かない日が来るかもしれない。(菊地選手)

 ◆菊地選手(きくちせんしゅ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。著書に『野球部あるある』シリーズがある。

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