イチローまた“曲芸”3安打「僕は抑えられない」

[ 2010年4月30日 06:00 ]

9回、中前打を放つマリナーズのイチロー

 【マリナーズ6-5ロイヤルズ】天才のエンジン全開だ--。マリナーズのイチロー外野手(36)が28日(日本時間29日)、ロイヤルズ戦で今季2度目の3安打をマーク。チームの2連勝と5割復帰に貢献した。第1打席では内角低めのボール球を左方向に運ぶ究極の技を披露。外角高めをつま先立ちで打ち返した前日に続く仰天の悪球打ちだ。自身メジャー2番目の早さとなる22試合目で30安打にも到達。10年連続200安打へ死角はない。

 そこもまた、安打ゾーンだった。初回の第1打席、2ストライク0ボールからの4球目。見逃せば踏み出した右足を直撃しそうな、内角低め79マイル(約127キロ)のカーブに体が反応した。流れていく体の開きにブレーキをかけつつ、究極の広角打法ともいうべきバットコントロールで、下から逆方向に押し返した。
 「(地面から)20センチあれば打てると感じる」とかつて話した妙技はさらに神がかってきた。芯でとらえた打球は三塁手の左を抜ける左翼線二塁打。前夜はこの打席の打撃ポイントと対角線上、外角高めの抜けたカーブに体を伸ばしながら左前打した。2戦連続の曲芸なみの見事な悪球打ち。これじゃ相手は投げるところがない。
 ロ軍マクルア投手コーチは「イチローはもはや直球では抑えられない。変化球で勝負するしかない」とそれなりの攻略法を口にしていた。しかし、これで対戦打率は・378(318打数120安打)。この3連戦で放った7安打のうち5安打が変化球。その上、ボール球まで打たれてはお手上げだ。
 それでは本人ならイチローをどう攻めるだろう。自分が投手でそんな打撃をされたらどう感じるか。試合後、こんな質問に対し、イチローは「僕がピッチャーだったら、僕は抑えられない。うん、無理だもん」と笑い飛ばした。
 5回無死二、三塁の好機には、一時勝ち越しとなる投前適時打。三塁線の芝の上で打球の勢いが落ちるスキに、快足を飛ばして一塁を駆け抜けた。11度目のマルチ安打はリーグトップ。さらに9回の中前打で今季2度目の3安打をマークするとともに、今季30安打目に到達した。22試合目での到達は1年目の01年(19試合)に次ぎ、05年と並ぶ自身2番目のスピードだ。もともとがスロースターター。メジャー記録の262安打をマークした04年も25戦目での到達だっただけに、期待は膨らむばかりだ。
 ワカマツ監督も「驚くほど多くの武器、そしてスピードを持っている。だから何が起きても不思議じゃない」と最敬礼した。チームも連勝で、勝率も再び5割に戻した。曲芸打法で楽しませ、チームも勝たせる。イチローのバットが止まらない。

 ◆イチ曲芸ヒット集
 ☆テニス(00年5月13日ロッテ戦)ベース手前でワンバウンドしたフォークを右前打。
 ☆スレスレ(06年4月19日レンジャーズ戦)外角低め、地面スレスレの球にバットをぶつけるように出して左前打。
 ☆ゴルフ(09年5月29日エンゼルス戦)内角低めのボール球をゴルフスイングのような軌道で右前適時打。
 ☆懐も(09年8月18日タイガース戦)内角高めのボール球も両腕を畳み、体の回転だけで右翼線へ。
 ☆剣道(09年9月4日アスレチックス戦)外角高めスライダーを叩き切るように左前へ。

 <ロ軍本拠地で止まらんマルチ>イチローが昨季5月6日から継続するロ軍本拠地カウフマン・スタジアムでの連続試合マルチ安打を8に伸ばした。これでウィテカー(タイガース)、ヘンダーソン(ヤンキース)を抜きビジター選手では単独1位に躍り出たが、イチローは「(球場との相性は)全然感触的には何もないけどね」と話しただけ。ロ軍選手の最多記録は通算3154安打の殿堂入り打者ブレットによる9戦連続。今季のカンザスシティーでの試合日程は終了したため、来季の記録更新に期待がかかる。

 <大好きカウフマン・スタジアム>イチローが100打席以上に立った14球場の中で、カウフマン・スタジアムは2番目に打率が高い。自身のメジャー通算打率・333を超えているのは半分の7球場で、本拠地セーフコ・フィールドはほぼ平均の・335。中地区の3球場では3割5分を超える好相性だが、同じア・リーグ西地区のエンゼルス、レンジャーズの本拠地ではやや苦戦している。

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2010年4月30日のニュース