うれしいクセに~~野村監督「大した記録じゃない」

[ 2009年4月30日 06:00 ]

<楽・日5>監督通算1500勝を挙げた野村克也監督(左)は、紗知代夫人から祝福のキス

 【楽天2―1日本ハム】素直じゃないのが、野村監督らしかった。会見場に登場して放った第一声は「(報道陣が)少ないな。人数を見れば大した記録じゃないってのが分かる」。そう言いながらも満面の笑みが浮かんだ。本拠地・Kスタ宮城で決めた史上5人目の監督通算1500勝。ベンチ前で選手会長の岩隈から花束を受け取ると大歓声のシャワーを浴びた。

 「満員のお客さんの中で偶然とはいえ、こういう節目の記録と遭遇した。晩年になって運が向いてきたのかな。ウイニングボール?どうしようかな。しばらく監督室に置いとくわ」
 節目の勝利へ、動いたのは1―0の6回。先頭の渡辺直が右前打し、2番・高須への送りバントのサインだった。セギノールの左前適時打につながる2点目で勝利を確定。「野球は正攻法と奇策の組み合わせ」の持論で言えば「正攻法」で奪った節目の勝利だった。
 70年、34歳で選手兼任で南海の監督に就任。監督生活は24年目になった。歴代1位の選手での3017試合出場と、監督でのダブル3000試合は他にはいない。1000勝以上での負け越し監督も史上初だ。ヤクルト時代は打倒長嶋巨人を掲げ4度のリーグV。その手腕を買われて低迷した阪神、球団創設2年目の楽天でチームづくりを任されたからこその勲章の“借金6”だ。
 監督通算勝利の歴代1位は確執もあった南海時代の鶴岡監督。「“何が3冠王や”とさえ言われたわ。自分のとこの選手はけちょんけちょん。相手の選手はべた褒めやったな」。ぼやきのルーツを認めたうえで「三原、水原、鶴岡はオレの現役時代の大監督。こういう人より上に行っちゃいけない」と謙虚に言った。
 節目の勝利を見守った沙知代夫人と2人の孫からの祝福のキスの直後には「1500勝、喜んでる場合か」。73歳の照れ隠しだったが、その言葉にはいつまでも尽きない勝利への執着が見えた。

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2009年4月30日のニュース