田中討ち“同級生”対決は坂本に軍配

[ 2008年6月17日 06:00 ]

<楽天・巨人>楽天先発・田中から巨人・坂本が右前安打を放ち、一塁ベースからリードする

 【巨人3―0楽天】幼なじみ討ちの2安打で坂本が存在感を示した。売り出し中の巨人・坂本勇人内野手(19)は16日、小・中学校時代の同級生でもある楽天・田中将大投手(19)から2安打。再三の好守に加えて、盗塁も決めるなど走攻守でチームの勝利に貢献。実績で先行されていた旧友との対決を制した。投げては内海哲也投手(26)が無四球で今季チーム初完封勝利。前日零敗の借りを返した。

 福島へ移動するバスに、坂本は母校・光星学院のTシャツ姿で乗り込んだ。小、中学校の同級生・田中から2安打1盗塁。好守もあった。プロに入って初のライバル対決だったが、普段と変わらない表情で振り返った。
 「意識?全然なかったですよ。どの投手でも毎打席ヒットを狙っているんで。試合に勝ったのが一番うれしいです」
 2打席連続右飛に抑えられたが「悪い感じはなかった」と臨んだ3打席目で内角直球を中前打。9回の第4打席は低めのフォークボールを右前にはじき返した。「センター方向に意識はあった。真っすぐは速いし、スライダーも切れる投手なので」。相手の力を認め、謙虚に基本に立ち返った中で、6試合ぶりのマルチ安打と結果を残した。
 高校時代、プロ1年目は実績で田中に大きく水をあけられた。同じ高校生ドラフト1巡目でも、4球団が競合した田中は球宴にも出場して新人王を獲得。堂上の外れ指名だった坂本が出たのはフレッシュ球宴、1軍は4試合の出場だった。その悔しさも糧にして今季は開幕スタメンを勝ち取り、全試合スタメン出場を続けている。ようやく巡ってきた舞台で追いつき、追い越す勢いを見せた。
 小学校時代、田中とともに昆陽里(こやのさと)タイガースで野球を始めた。同チームの執行(しぎょう)正昭理事長(64)は当時の様子をこう振り返る。「田中が3番・捕手で坂本は投手や遊撃を守り4番でした。坂本の方がやんちゃでしたね。田中がヒットを打った後は力んでフライばっかり打ち上げていました。ライバル意識が強かったんでしょうね」
 やんちゃだった少年は、プロに入っても「うまくなりたい」という思いで取り組んでいる。前カードの日本ハム戦(札幌ドーム)では先輩・隠善のバットを、前日は「少し重たいけど使ってごらん」とラミレスからもらったバットで打席に立った。「今はいろいろなことを試しているんです。感触とかですね」。打率は2割台前半になったが向上心は変わらない。
 原監督は「軍配を上げるとしたら坂本の勝ちだよね。守備も走塁も良かった」と称え、10代の対決には「長くドキドキさせる場面をつくってほしいね」。敵将・野村監督からは「坂本ってうまいじゃん」と褒められた。
 打って走って守って――。坂本が少年のように動き回った一戦で、田中は完投した。負けん気の強い者同士の対決。プロになっても、それは変わっていなかった。

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2008年6月17日のニュース