大野 リオ五輪後には修士論文、大外刈り研究 実証実験で技の秘密解き明かす

[ 2021年7月27日 05:30 ]

東京五輪第4日 柔道男子73キロ級 ( 2021年7月26日    日本武道館 )

表彰式で金メダルを手にする大野(撮影・小海途 良幹)
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 リオ五輪翌年の17年、大野は競技の第一線を離れ、天理大大学院で「柔道『大外刈』の効果的な施技方法に関する研究」と題した修士論文を執筆した。自身が最も得意とする技の研究だ。

 柔道には「崩し、作り、掛け、決め」と、技を成立させるための手順がある。「崩し」は相手のバランスを崩すことで、「作り」は技に入るために自分の体勢を整えること。ただし対人競技のため、思惑通りに進むことはほとんどない。モーションキャプチャを利用した動作解析、50人以上の天理大部員を相手にした実証実験により、その秘密は「作り・崩し」の一体化にあると分かったという。

 大外刈りは返し技を浴びる危険度が最も高い技。だからこそ「しっかり崩してから掛けたい」という心理が働くが、これでは相手に読まれる。ところが大野の場合は抜群の勝負度胸で作りと崩しを一体化。続く掛けまで連続的に行うことで投げきる。また踏み込んだ際の体勢は通常ならやや前傾だが、大野はやや後傾姿勢でタメができ、刈り足のパワーを生むことにつながっているという。

 担当教官だった84年ロサンゼルス五輪男子60キロ級金メダリストで、五輪3連覇の野村忠宏らを育てた細川伸二師範(61)は「大野という金メダリストが分析したことに価値がある。私も読んでおーっとなった」と評価。研究の成果が2連覇へつながった。

 《穴井監督の言葉響いた》NHKで解説を務めた穴井監督も、放送ブースで声をからした。「集中、執念、我慢」は大野が大学3年の秋、相手に逃げ回られていらつき、敗戦した試合後に授けた言葉。「“組んで投げにいくのが柔道。先輩ならどうしますか?”と聞かれて授けた。心に響いたのかなと思う」。リオ後は“独り旅”となった大野にとって、66キロ級で五輪代表争いを繰り広げた後輩の丸山城志郎の存在が大きかったとも証言。「以前は丸山が一歩引いていたが、ある時から同じステージに来た。丸山の存在は大きかったと思う」と目尻を下げた。

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