215キロ目のドラマ!駒大13年ぶり7度目V 戦後最大3分19秒差の最終10区大逆転劇

[ 2021年1月4日 05:30 ]

第97回東京箱根間往復大学駅伝 復路 ( 2021年1月3日    神奈川・箱根町~東京・大手町 5区間109・6キロ )

優勝し、チームメートと抱き合う駒沢大10区・石川(右)(撮影・吉田 剛)
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 往路3位の駒大が最終10区(23キロ)で大逆転劇を演じ、10時間56分4秒で13年ぶり7度目の総合優勝を飾った。3分19秒差の2位でたすきを受けたアンカー石川拓慎(3年)が20・9キロ付近で創価大を一気に追い抜くと、逆に52秒差を付けて大手町のゴールに飛び込んだ。10区での逆転優勝は01年の順大以来20年ぶり9度目で、3分19秒差の逆転は戦後最大。過去に4連覇を達成して平成の駅伝王者として名をはせた駒大が「令和の常勝軍団」の第一歩を踏み出した。

 過去6度の優勝中4度を復路逆転で成し遂げた「復路の駒大」の本領を発揮した。合計217・1キロの終着点。アンカー石川が08年を最後に、箱根で勝てなかったチームの鬱憤(うっぷん)を爆発させるようなど派手なガッツポーズでゴールテープをぶっちぎった。「やってやったぜ!」。コロナ下で無観客の大手町に藤色の雄叫びがこだました。

 歴史的な逆転劇だ。石川がたすきをもらった時点では首位の創価大と3分19秒差、1キロ以上の差が開いていた。絶望的といえる時間差に大八木弘明監督は「もう2位確保かなという思いもあった」という。だが、ただ一人、諦めない男がいた。去年10区を走って区間7位。早大にわずか1秒差でかわされて総合8位に終わった石川だ。「何が何でも去年の箱根の思いを晴らしてやろうと思っていた」。石川は勢いよく飛び出すと、6キロ付近で2分45秒差、13・3キロの新八ツ山橋付近では1分57秒差とじわりと詰め寄った。20キロ手前には1分を切り「可能性はあるかも」と闘志が湧いた。

 大八木監督のハッパが背中を押した。20キロすぎに運営管理車から「男だろ!」と名文句が飛ぶと、石川は「攻めた走りをしろと言われていた。ゲキが飛んでよっしゃとスイッチが入った」。東京五輪マラソン代表を決めるMGCで大迫らを終盤で突き放したOBの中村匠吾(28=富士通)ばりのスパートで一気に首位浮上。そのままゴールし、指揮官から「やったね、お前は男だ」と最大級の褒め言葉をもらった。

 10人のメンバーで4年生は1人だけだったが、最上級生が若いチームを束ねた。今季は力のある1年生が仕事に忙殺されずに練習に集中できるよう、風呂や洗濯時間などが決められていた寮則を変更。対応を疑問視する声もあったが、チームの一体感は増した。部の改革を実らせた神戸駿介主将(4年)は「1年生の力も使って勝ちにいこうということを理解してくれた。4年として一年間頑張ってきて最後に報われた」と笑みを浮かべた。

 来年度は今大会の経験者が9人も残る。常勝軍団復活を見据え、下級生中心チームで勝利を収めた大八木監督は「当然連覇したいし、3大駅伝も獲りにいきたい。チームからも日の丸選手を育てるのが目標」と宣言。令和時代も藤色旋風で箱根駅伝を盛り上げる。

 ≪順大に“やられた”20年前≫10区での逆転優勝は今年の駒大が20年ぶり9度目の快挙。20年前は初優勝から2連覇が懸かっていた駒大が17秒のリードを守れず順大に逆転優勝を許す結果となったが、見事にこの時の雪辱を果たした。また、中継時の3分19秒差からの優勝は、戦後では最大差からの逆転劇。

 ▼6区・花崎 最初から攻めようと決めていた。自分の走りができた。(大八木監督は)第2の父のような感じ。

 ▼7区・花尾 自分の仕事をできず、迷惑を掛けてしまった。力のなさが出てしまった。

 ▼8区・佃 調子も良く前半から差を詰めていければいいなと思っていた。(新型コロナウイルス禍で)1人で練習する機会が多く、その成果が少し出た。

 ▼DeNA・今永(15年度卒駒大OB)最終盤の大逆転劇、凄く感動いたしました。大学のOBとして誇りに思います。

 ▽駒沢大学 1592年(文禄元)に設立された曹洞宗の学林を起源とし、1925年(大14)に創立された私立大学。本部は東京都世田谷区駒沢で、都内に3つのキャンパスを持つ。陸上部は箱根駅伝に67年の初出場から55大会連続出場中。2000年に初優勝し02~05年に4連覇。出雲全日本大学選抜駅伝は3度、全日本大学駅伝は史上最多の13度制している。大学の主な卒業生にタレントのせんだみつお、ミュージシャンの久保田利伸、元プロ野球選手の新井貴浩氏、元サッカー日本代表の巻誠一郎氏ら。

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