駒大・大八木監督夫人で寮母の京子さん、“おふくろの味”で選手支えた

[ 2021年1月4日 05:30 ]

第97回東京箱根間往復大学駅伝 復路 ( 2021年1月3日    神奈川・箱根町~東京・大手町 5区間109・6キロ )

寮母としてチームを支える大八木京子さん(駒大提供)
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 駒大の13年ぶりの箱根路制覇を陰で支えた人がいる。1995年に大八木監督が母校のコーチに就任してから、駒大陸上部の元マネジャーで夫人の京子さんは寮母として選手の食事面をサポートしてきた。平成の常勝軍団の素地を築いた縁の下の力持ちの存在が、大学駅伝2冠の復活の原動力となった。

 エネルギー消費量が多い長距離ランナーにとって体は何よりの資本。大八木監督がコーチに就任した当時は各自が簡単な食事で済ませ、ケガや貧血を起こす選手が多かったという。練習と同等に食事を重視する夫から「食事を作ってほしい」と打診された京子さんは、当時1歳の長女が生まれたばかりでも迷うことはなかった。「当時の寮の台所は狭くてボロボロ。食事もあまりにひどかったので、やらないと、という感じでした」。マネジャー時代の知識を基に、食の改革は手探りでスタートした。

 他大学の多くがケータリングを頼む中、平日の朝晩、50人以上の部員の全ての食事を手作りする。朝は午前5時から台所に立ち、夕食の準備は午後3時から始まる。07年からは食事を作りながら2年間専門学校に通い、栄養士免許を取得。それでも京子さんはあくまで「普通の家庭料理」にこだわる。「カロリー計算もしていません。数字ばかりが前に出ちゃうと選手も食べにくいと思うので。後でこんな栄養が入っていると分かってもらえれば」。その根底には「寮は帰ってゆっくりする場所」という第2の母としての思いがある。

 多くの作業をこなしながら、選手一人一人に目を配ることも忘れない。大八木監督は夫人から聞いた「この子は練習後キツそうで凄く時間をかけて食べていた、あの子は全く口に持っていけなかった」といった寮での様子を参考に、練習内容に工夫を加える。新入生には京子さん自ら栄養講座を開き、選手も足りないと自覚した栄養をサプリメントや果物で補うなど意識が高まった。5区で力走した鈴木芽吹(1年)ら高校でケガの多かった選手も離脱することがなくなったという。

 26年寮母を務める京子さんにとっても、新型コロナに悩まされた昨年は異例の年だった。閉寮はしなかったが、選手を預かる立場として「一人がかかると全員に感染してしまう怖さはあった」。自身もプレッシャーと戦いながら、思うように練習ができずに苦しむ選手たちを鼓舞してきた。大八木監督は言う。「みんな私よりも女房の方に恩返ししたいという気持ちが大きかったと思います」。“家族”で困難を乗り越え、手にした大学駅伝2冠は格別だった。

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2021年1月4日のニュース