競技力+発信力 荻原健司と同じ“キング・オブ・スキー”の道をたどる渡部暁斗

[ 2017年11月30日 11:00 ]

荻原健司(左)と渡部暁斗
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 銀メダルを獲得したソチ五輪からの変化を挙げるとすれば、何よりもメディアに努めて露出するようになったことではないか。

 オフシーズンのインタビューで疑問をぶつけてみると、渡部暁斗(29=北野建設)はこう言ってうなずいた。

 「意図的にやってますね。自分がつなぎになるしかないかなと思っている。盛り上がらないっていうのを、もし盛り上げられるヤツが出てきた時のつなぎです」

 ノルディック複合が人気競技になるのは難しい。そんな達観を抱いていた男の少しばかりの変節。

 「僕がいくらメディアに露出してもコンバインド(複合)の大会は増えないし。集客を求めることはできないじゃないですか。でも僕が露出することで得られるスポンサーもある。それで若い子たちが育って、たとえば凄いイケメンが出てきたり(笑い)。そういうつなぎになれればいいかなって」

 国際スキー連盟(FIS)はこれまで男子のみだった複合競技の女子部門普及にも力を入れ始めている。ジャンプのように、女子によって注目度が倍増することだって将来的にはあるかもしれない。



 北野建設スキー部の荻原健司部長も同様の変化を感じていた。

 「ソチ五輪の前後は多方面から出演依頼をいただいても本人は乗り気ではなかった。僕がやるべきは競技。できるだけ断ってくれと言っていた。それが今は時間の許す限り対応すると。自分の目標、夢のためだけでなく、日本のスキー界、世界のスキー界、世界のコンバインドという意識が出てきた」

 五輪や世界選手権でメダルを獲っても、それだけでは競技の認知度、関心は高まらない。荻原氏には共感できるものがあるのだ。

 「僕も五輪でメダルを獲って日本に変えてきたけど、あんな競技あったんですかという反応でしたから。同じ体験をしているなと思う」。だから渡部暁の変化を「自分のやっていることを自分から発信していこうというプロとしての自覚、変化」と頼もしく見ている。



 平昌五輪を2カ月後に控え、フィンランドのルカで行われたW杯開幕3連戦で、渡部暁は第2戦での優勝を含む2度の表彰台に上がり、複合部門の週間MVPに選ばれた。FISの公式サイトでは「驚くべき内面の穏やかさと、自分や周囲に対する冷静で客観的な視線を持ち合わせている。ノルディック複合のファミリーの中で誰よりも好感の持てる人物」と紹介された日本のエース。“つなぎ”と言わず、主役級の発信力をこれからも期待したい。(雨宮 圭吾)

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2017年11月30日のニュース