稀勢 初単独首位ターン“勢い”止めた全勝対決完勝

[ 2016年3月21日 05:30 ]

左差し右上手の万全な形で勢(右)を寄り立てる稀勢の里

大相撲春場所8日目

(3月20日 エディオンアリーナ大阪)
 初優勝を狙う大関・稀勢の里が過去10戦負けなしの平幕・勢との全勝対決を寄り切りで制して勝ち越し、単独首位に立った。先場所、同じ日本人大関の琴奨菊に先に優勝を奪われた悔しさをバネに努力。ひたすら自分を信じて前半戦を全く危なげなく全勝で乗り切った。優勝争いは無敗の稀勢の里を1敗で白鵬、鶴竜、琴奨菊、豪栄道、勢の5人が追う展開となった。

 冷静沈着、泰然自若。これまで16場所連続で前半戦に必ず星を取りこぼしてきた稀勢の里の心が今場所は揺らぐ様子がない。この日は大阪出身の“ご当地人気力士”勢との全勝対決とあって声援の数では負けたが、相撲は完勝。立ち合いで差し勝って左四つで前に出ると、相手の強引な小手投げにもしっかり体を寄せて対応する。最後は相手の上手を切る技術も披露して盤石の寄り切りだ。

 ストレート給金は自身4度目だが、単独首位で折り返すのは初。全勝の日本人が単独首位で後半戦を迎えるのも07年秋場所の安美錦以来だが「いいと思います。まだこれから」と言葉は少ない。勝負後に多くを語らない姿は昔かたぎのお相撲さんそのもの。積極的に自分の考えを口にする琴奨菊とは対照的な29歳が初優勝に向け乗ってきた。

 悔しさを力に変えた。これまで全く優勝争いに絡んでこなかった琴奨菊に先に賜杯を奪われた先場所千秋楽。「言いたいことは山ほどあるけど胸にしまってまた頑張ります」と思いを隠して前を向いた。「自分のやってきたことを信じて」と合言葉のように口にする姿勢は変わらず、ジムよりも土俵での稽古を重視。連日、弟弟子の高安と三番稽古をこなした。これもトレーナーの意見を積極的に聞き入れる琴奨菊とは対照的。NHK放送で解説する親方の意見も「基本気にしない」。それでも今場所前にはほぼ口をきかない琴奨菊の元に自ら出向いて稽古するなど頑固な思考回路に柔軟さも加わっている。

 幕内単独史上最多の59度目の対決となる9日目の琴奨菊戦から大関横綱戦が開始。「状態はいいですから力を出し切っていきたい」。本当の勝負はここから。自分のやってきたことが正しかったと証明するための厳しい戦いが始まる。

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2016年3月21日のニュース