東洋大3年・松永が競歩でリオ切符 駅伝のモットーから力

[ 2016年3月21日 05:30 ]

男子20キロ、1時間18分53秒で優勝した松永大介

全日本競歩能美大会

(3月20日 石川県能美市日本陸連公認コース)
 20キロのリオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて行われ、20歳の大学3年生、松永大介(東洋大)が1時間18分53秒で優勝し、初の五輪代表に決まった。日本陸連が定めた派遣設定記録突破と今大会日本人1位の条件を満たし、日本選手権を制した高橋英輝(23=富士通)に続いて代表の座を射止めた。世代別の世界選手権で結果を残してきたホープはアイドル好きの一面も持つ。大舞台での金メダル奪取を宣言した。

 ぶっちぎりの強さだ。松永は序盤から仕掛け、8キロを過ぎてからは独走態勢。2位に51秒差をつけての優勝は、自己ベストを15秒更新する1時間18分53秒の好タイムだ。五輪切符を意味するゴールテープを切ると、童顔から涙があふれた。

 「今回こそリオ代表を獲りたいと思っていた。内定を獲れて良かった。金メダルを目指したい」

 当初は違うレースプランだった。既に派遣設定記録(1時間20分12秒)を破っているため、即時内定となる日本人1位を狙って「記録より順位」で歩くはずだった。ところが「体が動いた」とそのまま押し切った。

 横浜高1年の夏に自ら進んで競歩を始め、涙の数だけ強くなってきた。応援に駆けつけた同校陸上部顧問・田下正則さんが忘れもしないのは、高校2年時の“幻の日本一”事件だ。全国高校総体5000メートル競歩のレース中に左の靴が脱げ、そのままの状態で残り約3キロを歩いて1位でテープを切った。だが、その後に悲劇が待っていた。

 「ゴールして座った瞬間に失格を宣告されました。歩型が乱れていたのでしょう。涙がゴーッとあふれていました」

 世代別の世界大会でメダルを手にしてきたホープは、昨年のこの大会でも涙をのんだ。2位藤沢勇にタイム差なしで先着され、世界選手権代表を逃した。この日、左腕に「その1秒を削りだせ」と書いたのは1秒の重みを忘れないため。東洋大・駅伝のモットーから力をもらい、2月の日本選手権失格から挽回した。

 世界記録(1時間16分36秒)保持者の鈴木雄介が故障で選考争いから姿を消した。エースの穴を23歳の高橋と20歳の松永が埋めた。2人には共通点がある。高橋がAKB48と乃木坂46好きで、松永はももいろクローバーZの大ファンだ。アイドル好きと競歩が新世代のキーワード。型破りな若手が、五輪でメダルがない競歩界の風穴をあける。

 ◆松永 大介(まつなが・だいすけ)1995年(平7)3月24日、横浜市生まれの20歳。横浜市立浜中学校で陸上を始める。横浜高1年時に先輩を見て「直感的に面白そうだと思った」と競歩を始める。3年の全国高校総体男子5000メートル競歩で優勝。東洋大に進み、14年世界ジュニア選手権1万メートル競歩で優勝。昨夏のユニバーシアード20キロ競歩で銅メダル。新学年から部の寮長に就任する。1メートル74、61キロ。

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2016年3月21日のニュース