【オヤジのぴりから調】「日本が一番」門戸開放進まぬマラソン界

[ 2015年8月25日 05:30 ]

 北京で世界陸上が始まった。五輪を挟んで2年に1回開催されるが、五輪前年の大会は毎回盛り上がる。条件さえクリアすれば五輪代表に内定するからだ。注目の男女マラソンは8位入賞が条件だったが、初日に行われた男子は藤原正和(ホンダ)の21位が最高と惨敗した。厳しい現実を目の当たりにした日本陸連の宗猛マラソン部長は「世界と凄く力の差を感じた。若手に期待したい。今いる選手では厳しい」と嘆いたという。

 日本の男子マラソンが低迷した最大の理由は、アフリカ勢の台頭だ。日本が強かった80年代から90年代前半はまだアフリカの選手が少なく、我慢強い耐久型の日本選手が活躍する余地があった。しかし90年代後半から経済発展を背景にアフリカの選手たちがマラソンに進出。心肺機能と筋力に優れる彼らは駆け引きも何もなくスタートから圧倒的な速さで42・195キロを走り切り、今や世界記録は2時間2分台まで縮まった。

 もちろん、外部要因だけではなく、日本側の問題も大きい。アフリカ勢は先天的な素質だけではなく常に最先端の医科学トレーニングを取り入れて能力アップに努めているが、日本では相変わらず各チームばらばらの強化で、期待されたナショナルチームも何ら効果を挙げていない。学生も実業団も駅伝が最優先で、マラソン練習は個々のレベルにとどまる。そのためトラックのスピードをマラソンに生かし切れていない。

 事ここに至っては、もう一度日本のマラソン界が復活するためには過去の栄光を捨て、もっと世界に目を向けるべきではないか。今の日本の環境では永久に2時間2分で走る選手は出てこないだろう。全国から素質のある選手を見いだし、できるだけ早い段階で海外に移住、もしくは長期滞在させ、海外の実績のある指導者に預ける。同時に国内でも外国人指導者、スタッフを増やす。他の競技ではとっくに当たり前の話だが、いまだに「日本が一番」という考え方が根強いマラソン界はほとんど門戸開放が進んでいない。

 別に日本の指導者が悪いと言っているわけではない。日本のいいところは残し、その上で世界のいいところも積極的に取り入れる。そこで初めて世界に通用するマラソン選手が生まれるのではないか。東京五輪まであと5年。今すぐ動きださないともう間に合わない。(編集委員 藤山健二)

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2015年8月25日のニュース