冨田 涙で潔白主張「盗んでいません」 2時間45分えん罪訴え

[ 2014年11月7日 05:30 ]

会見で涙をぬぐう冨田

 9月の仁川(インチョン)アジア大会の競泳会場でカメラを盗んだとして略式起訴され、日本水泳連盟から16年3月末まで選手登録停止処分を受けた男子平泳ぎの冨田尚弥(25)が6日、涙ながらに潔白を主張した。名古屋市内で会見に臨み、1時間45分の予定を1時間も延長して、えん罪を強調。しかし、その2時間後、日本オリンピック委員会(JOC)側は冨田が窃盗している監視カメラの映像を確認していると冨田の主張を否定した。

 165分にわたり、冨田がえん罪を主張した。「僕はカメラを盗んでいません」。時折、報道陣の質問に沈黙し、目に涙を浮かべながら、懸命に前を向いて発言。冒頭では国田武二郎代理人弁護士が、帰国後に冨田が急性ストレス反応とも診断されたことを明かし、返答に詰まる冨田をかばう場面もあった。会見場にはテレビカメラ約30台、100人を超える報道陣が大挙。「韓国から帰ってきて、テレビでニュースを見てもカメラに目が行ってしまう。きょうも(カメラに)囲まれているのでキツイ状況」と冨田は心境を吐露した。

 冨田はアジア系の男にカメラをバッグに入れられたと主張。カメラをバッグに入れられたときは「ごみだと勘違いした」と話し、その場で確認しなかったのは「(その人物から)危害を加えられるのが嫌だったのでバッグを取り返して立ち去った」ためと説明した。すぐに周囲に相談しなかったことを「凄く後悔している」と述べた。

 仁川南部警察での取り調べでも「事実を認めれば事を大きくしない。日本にみんなと一緒に帰れる」と言われ、周囲に迷惑をかけたくないと思い「はい。はい」と答え、盗んだ事実関係を認めたと言う。この日は「警察で強い意志を持ってやっていないと言えばよかった。僕の心が弱くて言えなくて、大変迷惑をかけてしまったので、申し訳ない気持ちでいっぱい」と後悔を口にした。

 日本水連の処分に関しては「上野競泳委員長や平井先生を信頼しているし、申し立てをすると相手取ることになると思った」との理由で不服申し立てを申請しなかった。

 今後は今月下旬以降に届く判決文の送付を待ち、7日以内に正式裁判の申し立てを申請するかどうかを検討する。ただ、韓国の裁判では韓国人弁護士が必要で、裁判にかかる費用は1000万円を超えると言われる。事件後に契約社員として所属していたデサントから解雇された冨田は経済的に難しい。それでも、「(司法の場で争う気持ちは)ある。会見で真実は自分の中で話せた」と最後までえん罪を訴えた。

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