日馬富士、9勝止まり 新横綱初の屈辱5連敗

[ 2012年11月26日 06:00 ]

白鵬(右)に敗れ肩を落とす日馬富士

大相撲九州場所千秋楽 

(11月25日 福岡国際センター)
 新横綱の日馬富士(28=伊勢ケ浜部屋)は14日目に優勝を決めた白鵬(27=宮城野部屋)との横綱決戦に下手投げで敗れ、11日目から5連敗。まさかの9勝に終わった。新横綱が昇進場所で5連敗するのは、史上初。2桁勝利に届かなかったのも87年九州場所の大乃国(8勝)以来史上3人目の屈辱となった。新横綱に対する周囲の反応は厳しく、来年の初場所(1月13日初日、両国国技館)では早速、真価が問われることになった。
【取組結果】

 満面に笑みを浮かべた白鵬の優勝セレモニーが盛大に行われていたとき、重苦しい雰囲気に包まれた西の支度部屋では、日馬富士が精根尽き果てた表情で報道陣の前に姿を見せた。初体験の15日間。終盤の大失速で綱の責任を果たせなかった“クンロク(9勝6敗)横綱”は時折ため息をつきながら、必死に前を向いた。しかし、現実は残酷だ。新横綱として史上初の5連敗、大乃国以来となる25年ぶりの1桁勝利。それでも「素晴らしい場所であり、いい経験、勉強になりました。私はこれから。負けた相撲も勝った相撲も全てプラス」と強がってみせた。

 勝つ必要があった今年最後の取組だった。「やれることはやった」。白鵬に対し、間合いをずらすために制限時間いっぱいで先に両手をついた。思わず相手が“待った”をかけて仕切り直しとなったが陽動作戦は全く通じず、完敗。良かったのは先に踏み込んだ立ち合いだけで、がっぷり組み止められると最後は左四つの体勢から相手の下手投げで背中から叩きつけられた。

 初日前日の10日には「勝利の神」として有名な筥崎(はこざき)宮(福岡市東区)に参拝に訪れていた。午前中に行われた土俵祭りの後に出向き、新横綱の重圧に負けずに白星を重ねることができるように願掛けし、絵馬には覚えたばかりの「夢」という1文字を書き、自らの成功を誓った。その効果もあってか10日目までは順当に9勝1敗。だが、相撲の神様は味方はしなかった。場所の中盤に深夜まで外出する日もあり、終盤戦には徐々に朝稽古を休み始めた。そのツケは成績に表れた。11日目の琴奨菊戦で敗れると一気に歯車が狂ってしまった。

 来場所も結果を残せなければ一気に進退問題に発展する可能性もある。今場所優勝した白鵬は常々、元横綱・大鵬の納谷幸喜氏の言葉を借りて「横綱になった時に引退することを考えた」と自らを戒めてきた。もう上に番付はなく、弱くなれば存在する価値がないという“横綱道”。綱の重みについて尋ねられた日馬富士は「はっはっはっ」と不敵な笑みを浮かべたが、もう一度、その重みをかみしめなければ、自身の土俵人生を早める結果を招くだろう。

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