上野3連覇ならず…延長判定負けで無念の銀

[ 2011年8月26日 06:00 ]

女子63キロ級決勝でエマヌに敗れ、3連覇を逃した上野(左)

柔道世界選手権第3日 女子63キロ級

(8月25日 フランス・パリ、ベルシー体育館)
 女子63キロ級の上野順恵(28=三井住友海上)は決勝でジブリズ・エマヌ(フランス)に延長の末に判定で敗れ、銀メダル。日本人選手として史上7人目となる世界選手権同一階級3連覇はならなかった。阿部香菜(23=三井住友海上)は初戦で左肘を脱臼し、無念の棄権負け。また、男子81キロ級の中井貴裕(20=流通経大)は4回戦で、高松正裕(29=桐蔭学園高教)は初戦で敗れ、今大会初めて日本勢が表彰台を逃した。第2日の女子57キロ級では佐藤愛子(27=了徳寺学園職)が初優勝を飾った。

 地元フランスの大歓声に押されたか、左の釣り手を抑えられたのが致命傷だったか。延長判定で相手エマヌの勝利を示す青い旗が3本そろっても、上野の表情は変わらなかった。国際連盟に「現役最高女子選手」の称号をもらった直後の大会。日本女子選手史上3人目の同一階級3連覇の夢がついえたことを、淡々と受け入れた。

 厳しい組み合わせを勝ち抜いた。4回戦、準決勝は連続してゴールデンスコアに突入。それでも、技でポイントを奪って決着させてきた。しかし、3戦連続の延長戦となった決勝は、その技を出せずに終わった。

 気持ちが揺れ動いた時期を乗り越えてここまできた。昨年大会で連覇を達成。63キロ級で不動の女王として君臨することで、世界中の標的となった。組み手、技を徹底的に研究され、自分の思い通りの柔道ができない。遠征や試合が続き、ブラッシュアップもできない。敗れると、敗れた自分が許せず、いらいらが募った。

 そんな気持ちを変えてくれたのは、1年以上の休養を経て三井住友海上のコーチに戻ってきた姉・雅恵さんだった。何のために今、戦っているのか。どうすれば平常心を保てるのか。実際に柔道着を着て組み合う練習だけでなく、五輪連覇を達成した姉のすべてが教材。「負けることが嫌だったけど、大人になろうと。しっかりと負けと向き合って、やってやろうと思えるようになった」。それが成長のはずだった。

 旭川南高時代から主将、副主将の関係だった佐藤が、前日の57キロ級で優勝。同時金メダルの夢も消えた。これで、最大のライバルとなるエマヌには、1月のマスターズに続き、連敗。来年のロンドン五輪は、追う立場として臨むことになる。

 ◆上野 順恵(うえの・よしえ)1983年(昭58)7月1日、北海道生まれの28歳。旭川南高―三井住友海上所属。全日本選抜体重別6回優勝。姉・雅恵はアテネ、北京五輪70キロ級金メダル、妹・巴恵も柔道選手。得意技は体落としと大外刈り。1メートル64。

 ▼全日本女子・園田隆二監督 上野はここ1年、弱気が出て負けていた。今回はやってきたことは出せた。決勝も大差(の判定負け)ではない。アウェーは投げないと。ロンドン五輪は金メダルを狙える位置にいるので頑張らせたい。

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