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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】さくさくアジわう昼ビール

[ 2015年11月20日 05:30 ]

あさひ食堂
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで 店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。世界で日本食ブーム。和食もユネスコ無形文化遺産になりました。でも日本人が日本人のために残すべき食のレガシー(遺産)は「日本食」とか「和食」といわれるものだけでは、どこか芯を食っていない気がします。その答えを久住さん、三重県四日市で見つけました。

 近鉄四日市駅の近く。メーンのアーケード街から外れた一角で発見。建家は鉄筋で新しいが、看板の「あさひ食堂」の文字に、オーソドックスでクラシックな食堂の匂いを嗅ぎつけて近づく。

 すると「はやい、うまい、やすい店 大衆盛場旭」と「あさひ食堂」のふたつの店名に加え、のれんは「旭食堂」と、店名の表記が混乱している。実はこういう店は歴史が長いことが多い。ある種、屋号はどうでもよくなっているのだ。それだけ歴史があり、常連客を獲得している証明でもある。バンド名が、ローリング・ストーンズでもストーンズでも、The Rolling Stonesでもいいようなものか。

 一番古そうなのれんの表記「旭食堂」が正式な名前だろう。レコードジャケットで言えば、たすきのようなメニュー看板の下に営業時間として「大衆食堂11~16時」「大衆盛場16~21時」とある。盛場は酒場のシャレだな。結局通しでやっている。まあ、昼は食堂、夕方から飲み屋ということだろうが、こういう店は結局、昼も飲めるのだ。

 ボクが入ったのは午後1時すぎだったが、ちゃーんと飲んでいるおっさんがいた。ボクもビールを頼むとキリンの大瓶がどんと出てきた。「生アジ(鯵)フライ」を頼む。熱々のがすぐ来た。ソースで食うか醤油(しょうゆ)でいくか悩むが、ここは関西圏なのでウスターソースのじゃぶじゃぶがけを決断。これがサクサクのホクホクでウマい!真っ昼間のビールにぴったりだ。店のお姉さんがいかにも関西のちゃきちゃきで、声も大きくしゃべるテンポが速く、なんだかこの店にいるだけで元気になってくる。関西弁は強くておもろい。やはり店は店員による。

 店の内側から見る、のれん越しの外の日差しが気持ちよく、昼ビールを祝福してくれているかのようだ。奥のショーケースにいろいろな小皿料理が入っていて、自由に取ってきて後で精算するスタイルは、昔ながらの伝統的大衆食堂。

 帰りの電車の時刻があったので、長居できず、肉うどん680円を注文。これが青ネギと牛肉がたっぷり入った逸 品。汁に浮いた肉の脂が食欲をそそる。

 ちなみにこの日の日替わりランチは「スタミナ焼・あんかけ豆腐・温泉卵・豚汁・ライス」で700円。超安い。メニューが多く、麺類・丼物・一品料理・小鉢とすべて充実している。仕事場や自宅の近所に欲しいのは、まさにこういう店だ。名物特産品ばかりでなく、こういう個人店こそ行政や観光課が守り、外部の者にもアピールしていくべきだとボクは思う。

 ◇旭食堂 1956年(昭31)創業。人気メニューの焼めし650円、オムライス700円、肉じゃが300円、野菜の煮物250円。三重県四日市市諏訪栄町6の15、近鉄四日市駅北口から徒歩2分。(電)059(352)7752。営業は午前11時~午後9時。火曜定休。

 ◆久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

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