×

旅・グルメ・健康

【生島ヒロシ オヤジの処方箋】本態性振戦 伝説のチャンプに学ぶ改善法 ユーモア持って工夫して

[ 2019年9月25日 12:00 ]

生島ヒロシ
Photo By スポニチ

 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(68)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は手や頭部が震える「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」です。聞き慣れない病名ですが、60代で10人に1人が発症とのデータもあります。震えを気にしすぎて外出を控えることで筋力が衰え、認知症につながるともいわれています。

 皆さん、こんにちは。生島ヒロシです。ようやく暑さも落ちついてきましたね。季節の変わり目、体調には注意しましょう。

 今日は「本態性振戦」です。難しい言葉ですね。本態性は医学用語。「症状が存在するのに原因が分からない」という意味。振戦は「意思に反して起こる規則正しい震え」。要するに「原因が分からない震え」です。

 飲み物が入ったコップを持つ手が震えたり、字を書こうとしたら震えてゆがんでしまったり。別に寒いわけでもないのに。思い当たる節はありませんか?

 震えを伴う病気というとパーキンソン病が有名ですよね。高齢になって震えが出るとパーキンソン病を疑います。パーキンソン病は安静にしている時でも震えが出ますが、本態性振戦は何か動作をした時に震えるという違いがあります。

 今回、ご意見をうかがった脳神経外科、眞田クリニック(東京都大田区)の眞田祥一院長によると本態性振戦は「命に関わる病気ではない」ということです。震え以外に症状がないからです。でも、震えているのを見られるのは恥ずかしい。人間なら誰でもそう思いますよね。外出や付き合いを控える。これがQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の低下につながるのが問題なんです。

 【原因】「本態性」ですから原因は不明。寒さ、緊張、恐怖などで震える「生理的振戦」が激しくなったものとの見方もあります。加齢によって神経細胞の数が減ることから、神経組織に何らかの異常があるとの指摘もあります。祖父母、両親に見られると本人にも発症するケースが多いことから遺伝ともいわれています。
 【検査】まず「渦巻き」の図でテストしてみてはどうでしょう。でもあくまでも簡易テストですから。震えが気になったら脳神経内科か脳神経外科に行ってください。精神科や心療内科は適さないそうです。自覚症状もあるので、問診、視診で分かることが多いです。パーキンソン病との区別を付けるためMRI(磁気共鳴画像装置)検査をすることもあります。

 【治療】軽度の場合は薬物療法。「β遮断薬」というものを服用します。これは、興奮や緊張で放出されるアドレナリンが、震えを起こすとされる骨格筋の「β2受容体」に達するのをブロックする薬。眞田先生は「必ず医師の指示の下で服用するように」と強調します。重度の場合は手術。脳内で震えをつかさどる視床を電極や超音波で刺激する方法などがあります。

 【予防法】眞田先生は「予防法は特にない」とおっしゃいます。う~ん、原因不明ですからね。ただ「リラックスすることが非常に大事」なんですって。

 私もラジオ、テレビの生放送前は緊張することがあります。そんな時は、腕をVの字に折って手を前後に揺らし、口をパクパクさせるんです。30秒ぐらい。これが私のリラックス法。眞田先生には「直接的に震えの予防と関係はないと思う」と言われてしまいました。それでも「その人がリラックスできるなら、それはベストの方法」ということです。人それぞれの方法でいいんですって。深呼吸もいいですよ。人前に出る前にスーハー、スーハーと。単純なことですが意外と効果あるんですから。

 怖いのはQOLへの影響です。震えているのを見られたくなくて、友達との食事も断る。外出もしない。これでは高齢者はどんどん筋力が弱っていきます。認知症にもつながりかねない。ダメですね。どうでしょう、いっそのこと「最近震えが出るんだ」とカミングアウトしてみるのは。60代で10人に1人ともいわれてるんですから「実は私も」となって、そこから会話が弾むかもしれませんよ。

 ちょっと一枚、写真を紹介させてください。私と、あのムハマド・アリ氏のツーショットです。アリ氏はパーキンソン病でした。手が震えていました。でもアトランタ五輪(1996年)の開会式で聖火の最終点火者を務めました。震えを隠そうともせず、何十億人が見ている開会式に出てきたのです。病気による震えも、全て受け入れていたのでしょうね。

 アリ氏はユーモアのある人でしたよ。写真は90年代前半に来日した時のものですが、私が米国留学時代に空手を教えていたことを耳にしたようで「パンチしてみろよ」と少年のようにいたずらっぽく顔を差し出したんです。私もパンチするマネをしてね。あのアントニオ猪木さんでもアリ氏にはパンチ入れてないのに。宝物の一枚です。

 アリ氏のように、というのはなかなか難しいですが、眞田先生も「日常生活に支障がないなら受け入れる」と勧めます。自分なりにユーモアを持って、工夫して。コップの水がこぼれちゃうんなら大きなコップで飲んでみよう。字が乱れるなら、先の太いペンを使ってごまかしちゃえ、とね。震えたらどうしよう…なんて考えすぎない。いい季節になってきたので、散歩でもしてリラックスしましょう。

 さて、超刊スポニチは今月いっぱいで終了しますが、私の「オヤジの処方箋」は10月以降も続きます。10月からは毎月第2、4週の土曜日の紙面に掲載に。これからも健康情報をどんどんお届けしていきます!

 ◆生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の68歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る