×

旅・グルメ・健康

【さくらいよしえ きょうもセンベロ】恋しタイなら練馬の激辛天国へ

[ 2015年4月8日 05:30 ]

「福道」の常連は立ち飲みで激辛料理とお酒を楽しむ
Photo By スポニチ

 刺激を求めて東京・練馬へ。立ち飲みが大好きなさくらいよしえが訪れたのは「立呑 福道(ひょうたん)」。辛さに身もだえしながら酒を流し込み、ほろ酔う中で見たのは夢かまぼろしか…。「ひょうたんから恋」の一夜!

 今宵(こよい)は異国センベロ。タイ料理の立ち飲み屋さんだ。夕方になるとタイ人のお姉さんが作る色とりどりの大皿料理が並ぶ。イサン地方(タイ東北部)伝統の奥深くも本気の辛さが特徴だ。皆斜め立ちで飲む、食べる、時々恋とか、芽生える。

 「ここで出会って結婚2組、進行中なら何組も」とにこにこ言うマスターのマコトさん。タイから逆輸入されてきたみたいな不思議なおっちゃんだ。

 20代は日本でこつこつ働くも、「日本が小さすぎた」ので世界を放浪。風土が合ったタイを第二の故郷に商売を始めるももっぱら「かなづちだから山方面へ」。店内には調味料の他、タイ人必携の鼻の穴に入れスースーさせる清涼スティックも並び異郷の駄菓子屋みたい。

 珍しいタイ焼酎やウイスキーもあるが、30度、40度あたり前。「火炎瓶みたいのもあるヨ」と言うマコトさんは酒が弱い。

 さて、定番のソムタムに蒸し卵にひき肉がたっぷりつまったジューシーな「ホモガイ」に豚肉ソーセージを食べる。どれも甘みと酸味とスパイスのうま味が弾(はじ)けている。じわじわ辛い。猛烈に長く辛い。やがてわれわれ一行の会話は「ヒー」か「フー」になった。辛さに悶(もだ)えつつ手を伸ばす。叫びながらまた食べる。

 そこで登場したのは、マコトさん入魂の豆乳割り(果実系、紅茶など8種も)だった。なぜタイ料理屋で豆乳割り…と思いつつ皆で回し飲む。汗がマイルドな甘味とともにするするひいた。まだイケるぞと激辛天国に連続ダイブ。もはや会話は不要だ。

 しめにタイの辛い干し魚のおにぎりとトムカーガイ(乳白色でココナツ味)を食べ汗だくでほほ笑み合った。今あるのは一体感、これを絆と言うのだろう。連れの面々がいつもより愛(いと)しく思えた。

 嗚呼(ああ)、恋も生まれる、かも。マコトさんが「うちは人生経験豊かなお客さんも多いんです。バツなら僕もいくつかあるけど」と笑った。ちなみに今のワイフは30歳年下で、出会いはタイの床屋さん(ワウ!)。「モテるコツ」の教えを乞うた。「私、寂しがり屋だからかなア」。

 天井で揺れるひょうたんは愛のシンボリック!中年一行は青春をわかち合い精力を蓄え、「恋、したいナ」とつぶやきながら鼻に清涼スティックを塗りつつ帰途についた。(さくらい よしえ)

 ◆福道(ひょうたん) 今年6月で開店5周年。すっかり練馬の人気店となった。辛くないタイ料理や冷ややっこ(280円)といった和風メニューもある。店奥にテーブル席もあるが、常連客はいずれも立ち飲み。週末ともなると超満員となる。癒やしキャラのマコトさんを慕って訪れる客も多い。東京都練馬区豊玉北5の22の15。(電)03(3992)0406。営業はランチタイム午前11時半~午後2時半(月~土曜日)、ディナーは午後5時から深夜0時半まで。休みはランチタイムのみ日曜日。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)大阪生まれ。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)「にんげんラブラブ交叉点」(同)など。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る