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【さくらいよしえ きょうもセンベロ】利きが好きだとSAKEびたい

[ 2017年10月13日 12:00 ]

常連の証!さくらいよしえも白猪口10個で赤猪口1個と交換
Photo By スポニチ

 小さい秋を見つけに“センベロライター”さくらいよしえが“大人の遠足”に出掛けたのは東京都青梅市にある「澤乃井園」。東京の地酒「澤乃井」の醸造元・小澤酒造が経営する庭園で、多摩川の渓谷沿いにある園内ではいろいろなシーンで日本酒を存分に楽しむことができる。つい飲み過ぎてほっぺたも紅葉色に染まった。

 わしは今、猪口(ちょこ)を片手に頬を赤く染め、川のせせらぎに酔っている。こんな風流な一献が、これまでの人生あったかしら。

 東京の奥座敷、澤乃井園。湧水に恵まれ多彩な酒が生まれる仙境であり、梵鐘(ぼんしょう)の音が響く渓谷であり、櫛(くし)かんざしと日本画に触れ合える夢の楽園(すべては小澤酒造の現会長、21代目のアイデアと趣味によって昭和42年に誕生)。敷地内には、豆腐会席や上品な甘味処(どころ)があり、ナイスミドルに大人気。

 だがしかし。小市民せんべらーを歓喜させるステージがある。庭に設置された食券販売機。毎朝作られる自家製豆腐に牛筋煮込み、生原酒の小分けボトルまで、レトロな写真付きボタンに胸躍る。

 そして目玉は利き酒処。10種以上のお酒が並ぶカウンターでは、5勺(しゃく)入りの猪口(持ち帰り可)で1杯200円から500円で飲めるのだ。

 まずは東京オリンピックを見据えて造られた、純米酒「東京蔵人」にわしは打たれた。濃厚な生もとの味が最初にズンとくる。その後、爽やかな甘さが鼻から抜け、美しい去り際を見せる。「深い歴史と新技術を掛け合わせたハイブリッド」とか。

 柑橘(かんきつ)の涼やかな風味をかなでる柚子(ゆず)酒に、「王者の品格」の名コピーに負けぬ純米大吟醸「凰」。

 わしら取材班一行は黙々と杯を重ね、気がつくと青いカニのマークの白猪口が10個並んでいた。

 この仙境には、足しげく通う常連の「赤猪口会」なるものが存在するらしい。赤猪口は、白猪口10個と交換してもらえる、栄えある勲章。マイ赤猪口を持参する者は皆から尊敬のまなざしを向けられるに違いない。

 一目置かれたい野心に燃えたわしらは、見事赤猪口をゲットした。

 ふと、インターナショナルな風を感じた。アメリカから来た白人と黒人の4人組は5種類の酒を仲良くシェアしながら、感想を言い合っている。「SAKEとビアはどちらが好き?」。片言の英語で聞くと、「モチロン、ニホンシュガ、スキデス」と日本語かつ、空気を全力で読んだ真心アンサーだ。

 英語が話せる女子も働いている。「火入れした酒は、パストライズ。生酒はアンパストライズ。好みはスイートorドライ?で通じ合えます」

 世界が優しい、世界に優しい桃源郷。各国首脳よ、来れ、赤猪口会へ。(さくらい よしえ)

 ◆澤乃井園 「澤乃井」ブランドで知られる醸造元・小澤酒造が経営する庭園。多摩川の渓流沿いにあり、園内では豆腐会席を提供する「まゝごと屋」をはじめ酒と料理を楽しめる施設が充実。同社の会長・小澤恒夫氏のアイデアで開園。団体・個人旅行客の人気観光スポットとなっている。英語の案内や酒の種類を説明するパンフレットも置かれ、世界各国から日本酒党が訪れる。ひたすら酒を飲むのもよし、酒蔵見学や多摩川沿いの遊歩道を歩くのもよし。紅葉が始まる10月下旬からは一年中でもっともにぎわう。東京都青梅市沢井2の770。(電)0428(78)8210。営業時間は午前10時〜午後5時。月曜日定休(祝日の場合は火曜日)。

 ≪センベロ本ついに発売≫本連載「きょうもセンベロ」がついに本になる。イースト・プレス社から15日発売の「きょうも、せんべろ 千円で酔える酒場の旅」(さくらいよしえ・河井克夫著、定価1000円+税)。“せんべろ隊”が訪れた32軒の店を紹介。さくらい・河井コンビが本書のために書き下ろしエッセー&漫画も。いままでにない酒場ガイド本だ。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)大阪生まれ。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)「にんげんラブラブ交叉点」(同)など。

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