365日 あの頃ヒット曲ランキング 6月

【1974年6月】ひと夏の経験/ブレークした山口百恵 “青い性”路線の集大成

[ 2011年6月5日 06:00 ]

1975年5月13日、映画「初恋時代」で野外記者会見をする(左から)山口百恵、森昌子、桜田淳子の3人
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 ★74年6月ランキング★
1 うそ/中条きよし
2 激しい恋/西城秀樹
3 ひと夏の経験/山口百恵
4 私は泣いています/りりィ
5 積木の部屋/布施明
6 なみだの操/殿さまキングス
7 ふたりの急行列車/チェリッシュ
8 恋と海とTシャツと/天地真理
9 夫婦鏡/殿さまキングス
10 黄色いリボン/桜田淳子
注目ポケットいっぱいの秘密/アグネス・チャン
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【ひと夏の経験/山口百恵】

 「あなたに女の子の一番大切な ものをあげるわ」。いきなりこう切り出した15歳のアイドルの曲に世の男性諸氏はドギマギしてしまった。

 デビュー丸1年。5枚目のシングルを74年6月1日に出した山口百恵は、このフレーズで多くのアイドルの中の一人から、トップアイドルへと突き抜けた。オリコンチャートこそ最高3位止まりだったが、ラジオのベストテン番組や電話リクエストでは軒並みトップを獲得。ファンクラブの会員は「8000人から2万5000人になった」と当時のホリプロ担当者。同世代や大学生の人気以上に、中高年のファンがこの曲で増えたのが、百恵とともに“中3トリオ”と呼ばれた森昌子、桜田淳子と違う大きな特徴だった。

 デビュー曲の「としごろ」が正統派アイドルっぽい路線でいったものの、オリコンで37位止まりと振るわなかった。森昌子の「せんせい」は3位、桜田淳子の「天使も夢見る」は12位と比べると、スタートは惨敗もいいところだった。

 スタッフが出した第2弾以降の路線は「より大胆に、よりストレートに」だった。「あなたが望むなら 私何をされてもいいわ」(セカンドシングル・青い果実)「あなたが望めば何でも捨てる」(サードシングル・禁じられた遊び)と、歌い出しからきわどい、強烈なインパクトのある歌詞で聴き手を引き付ける手法は効果があった。

 いわゆる“青い性”路線の集大成的な曲となった「ひと夏…」をきっかけに、常時ベストテンを狙える位置までレコード売り上げやリクエストが急増。元来、年相応ではない大人びた雰囲気をかもし出していただけに、この路線変更は大当たりとなった。

 高村光太郎の詩を好み、時に楽屋ではゲーテやハイネの詩集を読むこともある文学少女。豚肉がダメで意外と好きなのは炭酸飲料。自分の顔については「全部嫌い。私が売れているなんて不思議でしょうがない」。「ひと夏…」がヒットしている頃のインタビューで百恵はそう答えているが、「あなたにとって女の子の一番大切なものって何?」という問いには「まごころ、優しさ」と優等生的な模範解答。露骨に答えることはさすがに許されなかったようだ。

 デビューから3年ほどは「ひと夏…」も手掛けた作詞千家和也、作曲都倉俊一のコンビによる曲がほとんど。これを前期と位置付けると、中後期は宇崎竜童、阿木燿子夫妻による作品となる。前期の代表曲の「ひと夏…」は45万枚のセールスを記録。百恵のテレビドラマ出演、映画のオファーはここから急加速していった。

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