365日 あの頃ヒット曲ランキング 6月

【1982年6月】赤道小町ドキッ/“総立ちの久美子”も驚きギリギリで完成したヒット曲

[ 2011年6月1日 06:00 ]

ライブでの山下久美子。今でも“総立ちの久美子”は健在だ
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 ★82年6月ランキング★
1 聖母たちのララバイ/岩崎宏美
2 赤道小町ドキッ/山下久美子
3 男の勲章/嶋大輔
4 渚のバルコニー/松田聖子
5 北酒場/細川たかし
6 原宿キッス/田原俊彦
7 夏のヒロイン/河合奈保子
8 誘惑/中島みゆき
9 NAI・NAI16/シブがき隊
10 On the Machine/杉本哲太&LONELY―RIDERS
注目あまく危険な香り/山下達郎
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

 【赤道小町ドキッ/山下久美子】

 走る、飛ぶ、さらには脱ぐ(Tシャツの下は水着)。やや甘えたような歌声からは想像もつかないライブパフォーマンスで、観客を陶酔せさ、しまいには席を立ち上がらせて、会場を興奮のるつにする。人呼んで“総立ちの久美子”こと、山下久美子はデビュー3年目で自身も驚く大ヒットを世に放った。

 カネボウ化粧品の夏のキャンペーンソング。大量のCMが連日テレビから流されたが、CMに引っ張られたというより、この曲に関しては4月1日のリリースからラジオの電話リクエストが好調で、評判が高かった。

 カネボウ側の意向で「赤道小町」という4文字のテーマが初めから決まっており、そのイメージに合わせて誰に歌ってもらうかを選考。一般的に知名度が高い歌手にという声がカネボウ側にはあったようだが、広告代理店側が学生を中心に人気があった山下を推薦。年明けにオファーが届いた。

 詞は売れっ子の松本隆、曲はイエロー・マジック・オーケストラの細野晴男臣が担当。レコーディング、リリース、CMオンエアのスケジュールを考えると、かなり厳しい日程だった。細野が曲を部分的に作っては、松本に届け、それに歌詞を付けていくという作業を繰り返し、丸3日をかけてほぼ徹夜で完成。レコーディング当日も細部を詰めて、現場で直すという綱渡りのような芸当で、指定の期日の発売にこぎつけた。

 成績優秀の女子高生が「刺激がない」と大分の高校を中退して博多へ。ウエイトレスのバイトで生活していたが、1年半後にソウルバンドのボーカルに。渡辺プロから声がかかったのが19歳。上京し、1年のレッスンを積んで80年に「バスルームから愛をこめて」でデビュー。東京・新宿のライブハウス「ルイード」を拠点にステージを重ねた。

 初ライブで35人だった観客は、2年後いす席、立見席の計400枚のチケットがすぐ売り切れるほどの人気に。“本拠地”からの卒業を決めたのが、「赤道小町…」発売直前の82年3月。売れて大きなホールでできるようになったというよりは、これ以上“小屋”でやると入りきれないファンであふれかえり、危険な状態になるからというのが本当の理由だった。

 レコード売り上げは41万枚を記録。TBS「ザ・ベストテン」に登場した時は、本物のゾウの上にまたがり熱唱。番組スタッフが、原始人のような奇抜な衣装を着てきた山下にヒントを得て、2週間かけて手配したという。

 「あのころはわけもなく突っ走っていた。自分が楽しくないと、人も楽しませられないってね」。山下はそう当時を振り返っている。

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