藤井四段が“金星”、イベント対局で久保王将破る「大きな収穫」

[ 2017年12月11日 05:30 ]

「将棋プレミアムフェスin名古屋」の特別対局で対局を振り返る藤井聡太(左から2人目)と久保利明王将(同3人目)
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 中学生棋士の藤井聡太四段(15)が現タイトルホルダーから“金星”を挙げた。10日に名古屋市内で開催された「将棋プレミアムフェスin名古屋」に参加し、特別公開対局で久保利明王将(42)に106手で勝利。非公式戦ながら「さばきのアーティスト」と呼ばれる振り飛車戦法の第一人者に序盤の劣勢を覆し、地元ファンに勇姿を披露した。

 優勢だったはずの久保が最後に頭を下げると、会場に割れんばかりの拍手が湧き起こった。金星を挙げた藤井は「タイトルホルダーの先生に教わることができて、勝てたのは大きな収穫になった」と喜びをかみしめた。春に2度対戦し1勝1敗だった羽生善治竜王(47=当時3冠)戦に続くタイトル保持者との非公式戦。それも大勢の観客が見つめ、独特の緊張感のある公開対局を制した。

 将棋の「さばき」は攻め駒を無駄なく敵陣に進入させたり、相手の守備駒と交換すること。先手で中飛車に構えた久保は、中盤で角と飛車の大駒2枚を金銀3枚と交換する「さばきの極意」で、藤井の王を追い詰めた。

 久保が先に相手の王が逃げられない必至を掛けたが、そこから藤井が反撃を開始。守備の馬の敵陣への利きも生かした切り返しで、鮮やかな逆転につなげた。藤井は「序中盤で力の差を感じた。でも一生懸命指したのが功を奏した」と振り返る。久保は「藤井さんの棋譜はほとんど見てきたが、実際に指さないと分からない。終盤に読みにない手を指され、力があると感じた」と強さを認めた。

 久保は誰よりも早く藤井の才能に仰天した棋士の一人だ。約3年前、ペーパーテスト形式の「詰将棋解答選手権」を小学6年だった藤井と同室で受験。序盤に藤井が退室したため、トイレかと思ったら解答を終えており、そのまま藤井が優勝したという鉄板ネタを、この日のトークショーでも披露した。久保が感じた驚嘆は初対局での勝敗という形で表れた。

 藤井が見せたのは強さだけではない。対局前のトークショーでは幼少期の写真がスクリーンに映され、約450人の観客から「可愛い〜」と声が上がり終始照れっ放し。北海道から前日入りし、朝6時から並んだという女性(55)は「強さと謙虚さ、無防備さのギャップが魅力的」と興奮が収まらなかった。

 ≪中学生で優勝の可能性、朝日杯オープン戦のみに≫藤井は10日放送のNHK杯テレビ将棋トーナメント3回戦で稲葉陽八段(29)と対局し、169手で敗れ8強入りを逃した。稲葉は今春の名人戦挑戦者で順位戦A級に在籍するトップ棋士。これで公式戦の通算成績は52勝9敗となり、中学卒業前に優勝の可能性が残るのは今月2次予選を控える朝日杯オープン戦のみとなった。

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