月9「いつ恋」は“脱・見やすさ” 坂元裕二氏が人間を掘り下げる

[ 2016年1月25日 09:00 ]

「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主演を務める(左から)高良健吾、有村架純(C)フジテレビ

 18日にスタートしたフジテレビ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(月曜後9・00)が初回から“泣けるラブストーリー”と話題を呼んでいる。脚本は「東京ラブストーリー」「Mother」などで知られるヒットメーカー・坂元裕二氏(48)。村瀬健プロデューサーは「本当の意味でのラブストーリーを作りたかった」と企画意図を語った。

 主演は有村架純(22)と高良健吾(28)。高畑充希(24)AAA・西島隆弘(29)森川葵(20)坂口健太郎(24)を加えた6人が織りなす群像ラブストーリー。クリーニング店に勤める杉原音(おと)(有村)と運送会社に勤める曽田練(高良)を中心に、東京という街にのみ込まれそうになりながらも必死に生きる6人の若者たちをリアルに描く。

 初回は音と練が出会ったが、2人のバックボーンがきめ細かく描かれた。音は幼くして母を亡くし、北海道に住む親戚の林田雅彦(柄本明)知恵(大谷直子)夫妻に引き取られた。町の有力者、25歳年上の白井(安田顕)との結婚を強いられようとしている。練は、福島で農業に従事する祖父・健二(田中泯)に育てられた。音に「同じだ。オレにも親はいねぇ」と告げた。インターネット上には「泣ける」「切ない」などの書き込みが相次ぎ、早くも評判になった。

 フジテレビのドラマ制作センターは数々のヒット作を生んだ「月9」枠をラブストーリーの枠として再認識。「恋仲」(昨年7月期)「5→9~私に恋したお坊さん~」(同10月期)と続く“原点回帰”の流れの中、「坂元氏で月9ラブストーリー」という、この上ないオファーが実った。

 坂元氏は「同・級・生」(1989年)「東京ラブストーリー」(91年)「二十歳の約束」(92年)「翼をください!」(96年)「愛し君へ」(2004年)「ラストクリスマス」(04年)「西遊記」(06年)「トップキャスター」(06年)「太陽と海の教室」(08年)に続く7年ぶり10本目の「月9」脚本。「これが自分にとって最後の月9ラブストーリー」とコメント。強い決意を示している。

 村瀬氏は「月9」7本目のプロデュースで、坂元氏とは「太陽と海の教室」以来のタッグ。企画意図を聞くと「本当の意味でのラブストーリーを作りたいと思っていたんです」と切り出した。

 「テレビ離れが叫ばれるここ数年、見やすいものを作らないと見てもらえないんじゃないかという空気の中でドラマを作っている気がして。そこには疑問がありました。『見やすいものを作らないと見てもらえない』というのは逆で『見やすいものしか作らないから、ながら見しかしてもらえないんじゃないか』と。むしろ、じっくり1時間、テレビの前にいさせるようなドラマを作らないとダメなんじゃないか。そういう思いが僕の中に凄くあって。そういう作品を作ることができる数少ない脚本家が坂元裕二さん。全話で10~11時間かけて人間を描く。人の心の動きを丁寧に描くラブストーリーを、この時代に打ち込みたい思いがありました」

 坂元氏の凄さは何か。

 「東京を舞台にした群像ラブストーリーと謳っているにもかかわらず、第1話の舞台はほとんど北海道。しかも主要6人のうち、ほぼ音(有村)と練(高良)しか描いていません。しかし、もうそれが『坂元さんの凄さ』の答えで、本当の意味でのラブストーリーを作るなら、まず2人がどんな人間なのか。それを描かないと、視聴者の皆さんはその人間の恋になんかに興味ないと思うんですよ。上辺だけのラブストーリーにならないよう、2人がどんな人間なのかを掘り下げて『こんな人だから、こんな恋をする』ということを全話で10~11時間かけて描くと決めました。だから、あの第1話。ほぼ2人の出会いしかやっていない。それを真正面からやるのが坂元さん」

 そして、坂元氏の真骨頂はセリフ。第1話の終盤、ファミリーレストラン。音は中高時代の恋愛話を練にし「不思議だよね。好きな人って、いて見るんじゃなくて、見たらいるんだよね」とつぶやく。オンエア中からインターネット上で話題になった。「坂元さんしか書けないセリフ。恋をしている人、みんなが思う気持ちだと思うんですよね。それがポンと出てくるのが凄い」。第2話以降も“坂元節”は随所に。「天才ですよね」と感嘆した。

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2016年1月25日のニュース