韓国の捕手コーチ10人中3人が「星野竜育ち」 世界初導入の「ロボット審判」に備える

[ 2024年3月5日 11:00 ]

春季キャンプでKIA捕手陣にノックをする中村武志 (写真:ストライク・ゾーン)

 「韓国プロ野球の伝え手」として知られる室井昌也さんが「スポニチアネックス」でコラムをスタートする。2002年から韓国プロ野球を取材し、外国人で唯一、KBO(韓国野球委員会)リーグから記者証が発行されているジャーナリスト。韓国球界との太いパイプを生かして執筆されるコラムは月に2回、第1、第3火曜日にアップする。

 【室井昌也 月に2回は韓情移入】3月23日に43年目のシーズン開幕を迎える韓国プロ野球KBOリーグ。1リーグ制144試合を戦う10チーム中、3チームで1軍バッテリーコーチを日本人が務める。いずれも1990年代終盤に中日ドラゴンズに在籍した「星野竜育ち」だ。

 6年ぶりにKIAタイガースに復帰の中村武志(56)は、「中日の後輩たちとたまたま一緒というのもいいよね」と笑う。

 鈴木郁洋(48)はKTウィズの2軍でコーチを3シーズン務め、今季からSSGランダーズの1軍バッテリーコーチになった。鈴木のプロ入り当時、中日の正捕手は中村だった。「(中村)武志さんはいろいろなことを教えてくれた仲のいい先輩でした」(鈴木)。

 鈴木は中日がセ・リーグを制した99年を振り返った。

 「武志さんは足の指を骨折していました。星野(仙一)監督に“武志は1週間で治させるから、その間はお前が頑張れ”と言われました。でもその頃、僕も鎖骨を骨折していたんですよね。それを隠していたのを思い出します」

 中村、鈴木がプレーする姿をコーチとして見ていたのが、29歳で指導者になった芹沢裕二(55)だ。芹沢は10年にKBO入り。4球団目となる斗山ベアーズでバッテリーコーチを務めている。

 鈴木は先輩たちについて「ベンチ同士でお互いにしかわからない視線を送ったりするのではないですか?」と異国のグラウンドでの再会を楽しみにしている。

 今年のKBOリーグは大きな変化がいくつかある。その一つが「自動投球判定システム(ABS)」、いわゆる「ロボット審判」の導入だ。投球のトラッキングデータ(追跡情報)が打者ごとに設定されたストライクゾーンを通過したか否かで、ストライク、ボールの判定が下される。判定の伝達は機器から球審が装着したイヤホンにビープ音で届く。球審はそれを聞いてコールする仕組みだ。

 KBOリーグでは20年8月から2軍でABSの試験運用を開始。今季、MLBよりも先にABSを導入することから事実上、トップリーグで世界初のロボット審判採用となる。ファームのコーチとしてロボット審判を経験済みの芹沢は「以前は1試合で10球くらい“えーっ”という判定や、コールが遅れたこともありましたがその点は修正されたと聞いています」と話す。

 またロボット審判初体験となる中村は「バッターの身長によってストライクゾーンが変わるという説明は受けましたが、かがんで構えるバッターにとってはストライクゾーンが広くなるという誤差も生まれると思うので、一番困るのはバッターではないですか」と話した。

 各コーチともロボット審判について「実際にやってみないと分からない」と答えた。もし中村、芹沢、鈴木の師である星野元監督が存命なら、ロボット審判についてどう思っただろうか。

 「“そりゃ野球じゃねぇ。審判は人がやるものだから感情が入っていい。プロ野球はそれをなくしちゃダメだ”って言うんじゃないですかね」(芹沢)

 KBOリーグでは公式戦開幕を前に3月9日からオープン戦がスタート。ロボット審判もオープン戦から本格導入となる。=敬称略=

 ◇室井 昌也(むろい・まさや)東京都出身。02年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、韓国では09年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当。KBOリーグで記者証を発行されている唯一の外国人。「ストライク・ゾーン」代表。

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