【独占インタビュー】楽天マー君 日本では15年ぶりワインドアップ投法に変更!日米通算200勝あと3

[ 2024年2月15日 05:30 ]

 「200」勝を目指す田中将(撮影・篠原岳夫)
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 楽天・田中将大投手(35)が、スポニチ本紙の独占インタビューに応じた。日米通算200勝にあと3勝と迫るが、ヤンキースから21年の古巣復帰後、4勝、9勝、7勝と不本意な成績を「どん底」と表現する。オフに3度目の右肘クリーニング手術を経た今季のテーマは「復活」。投球フォームを大きく振りかぶるワインドアップへ変更することを明かし、日本では09年以来15年ぶりとなる“新フォーム”で復活を目指す。(聞き手・後藤 茂樹)

 ――3度目の右肘のクリーニング手術(昨年10月)という決断はポジティブに選択できたのか?

 「来年また戦う上で、少しでもいい形で入るためには、となった時に、自分のこれまでの体の感じとかも分かっていたので。これは受けるタイミングなのかな、と思いました」

 ――ハードスローの投手である以上、勤続疲労は当然重なるし、避けられない道。

 「そこは必要になっているところじゃないですかね。数多く投げてきたので。公式戦だけでも2800イニング以上(※日米通算2827回1/3)投げているわけですし。ある程度のところでは、仕方ないんじゃないですかね」

 ――それが全てではないだろうが、ここ数年、投球の再現性や出力に影響していた。

 「そこはもう何と言うか、仮にそうだったとしても、プレーヤーとしてはそれは実はそうでした、というふうには言いたくないですよ。でも不安とか、そういうのは間違いなくなくなりますよ」

 ――キャッチボールやブルペンは、まだセットポジション中心。ただ数球、大きく振りかぶるワインドアップからの投球もみせた。

 「今年はワインドアップでいこうと思っています。去年も最後の方に取り組んでいて、最後に登板なかったんですけど、登板があればワインドアップで投げるつもりではいました。オフの期間もずっとそういうキャッチボールをしてきた。そのつもりではいます」

 ――ヤンキース時代の20年シーズンに一度、11年ぶりに試したが、最終登板(20年10月7日レイズとの地区シリーズ第3戦)でノーワインドアップに戻した。

 「最後の最後でね。それもまあ、自分の中ではいろいろありながらでした」

 ――今ではノーワインドアップのイメージが強いが、駒大苫小牧時代や楽天の若手時代はワインドアップで投げていた。

 「気持ち良く投げたいので。いろいろ細かく考えるというよりは。その中でしっかりと振りかぶって、自分のやりたい動きができるように、と思っています」

 ――ノーワインドアップにした狙いはチェックポイントを減らすためとも話していた。大きく振りかぶることで、出力は自然と増す部分があると思う。

 「まぁまぁ、そうですね。でもそこは別に期待しているわけじゃない。球速を上げたいからそうするというわけではなく、ただ気持ち良く投げるために、ということですね」

 ――先日、自分の野球人生の「どん底」にいると口にした。もう一度上を目指しそこへ行くという強い思いがないと出ない言葉。

 「自分が言ったからこうしているんですよ、と言いたいわけではないんですけど、ちゃんと向き合ってないと出てこないと思います。本当に底だと思うし、復活した姿を見せたいと思っている」

 ――11月に36歳を迎える年男。アンチエイジングの意識に変化は?

 「ないですね。それが別にいいのか悪いのか、分からないですけど。人それぞれのやり方だと思うから、周りの選手のやり方も特に気にはならないです」

 ――投球では特に左打者の外角、右打者では内角にあたるコースの制球に苦しんでいたとも口にしていた。

 「そうですね。そこはうまく投げられていなかった。精度が悪いから打たれることは多かった。コースが甘くなっていた」

 ――体の状態的なものか、それも影響したメカニック面が理由か?

 「何かこれだけ、というのはないです。コンディションもあるだろうし、技術もあるし、いろいろなことがあってのところです」

 ――これまでもできるだけ長く野球を続けたいと話してきた。キャリア観への変化は特にないか?

 「今年で18年目。着々と後は短くなっています。長くはないでしょうけど、別に変わらないですよ。先を見て、何年先見てやるということも大事でしょうけど、今自分のベストを尽くして何をやるべきか、というところだけですよ」

 ――具体的な目標は数字ではなく、チームの勝利というところ?

 「質の高い、チームに勝つチャンスを持ってこられる投球をすることですね。それでやっぱり、ファンの方々や野球を見ている方々に分かりやすいのは、2桁勝つことじゃないですか。結局数字は大きい。いい投球をしても勝てなかったら、数字の部分で見られる。2桁勝てば、復活したなと思われるだろうし。ただ、それが全てではないというのは、自分の中にはあります。それぐらいの投球をする、それが一番大事じゃないですか」

 ――3年間で出た課題をクリアにして、自分の投球をできれば勝ちを積み重ねられるという自信がある。

 「そうですね。やれれば、抑えられると思います」

 ▽田中将の肘のクリーニング手術 昨年10月下旬に手術を受け、試合復帰まで4カ月の見込みと発表された。術後1カ月でスローイングを再開している。過去、ヤンキース時代の15年10月20日に同手術を受け、翌16年には開幕投手も務め31試合で199回2/3を投げメジャー自己最多の14勝4敗、防御率3.07。19年10月23日にも2度目の同手術を受けたが、翌年はコロナ禍で開幕が7月下旬に遅れ、シーズンは60試合に短縮された。

 ≪2月下旬にも実戦形式≫今キャンプでは手術明けの右肘を考慮して慎重ながら、順調にステップを踏んでいる。序盤は立った捕手へのブルペン投球を重ね、10日に初めて座った捕手への10球を含む50球。12日には座った捕手へ31球、カーブやスプリットなど変化球も交えた。開幕ローテーション入りを目標に、早ければ今月下旬にも実戦形式で登板するプランもあり「ターゲットの一つ。絶対そこにという気持ちではないが、目指している」と調整を進めている。

 【後記】ヤンキース時代、現役終盤のサバシアの投球にうなずく姿が印象的だった。かつての剛腕投手が、加齢に伴う球速低下もあり、左右に球を散らし打たせて取る技巧派としてよみがえった。「左の外にシンカー、右にはカットボールで。あれだけモデルチェンジして本当に凄い」。36歳で迎えた17年に14勝と復活したメジャー通算251勝左腕。そんなモデルチェンジも頭にあるのか、聞いてみた。

 「そこは別にあまり感じていないかな。元々が真っすぐでガンガン押していく投手でもないので」。直球だけでなく、スライダー、スプリットの質と、引き出しの多さで打者と勝負してきた。手術で右肘の不安がなくなり、生命線だった左打者外角低めへの直球や、バックドアのスライダーが戻れば大きい。「どん底」と表現した裏に宿る覚悟。大きく振りかぶり、気持ち良く腕を振る背番号18に今は楽しみが大きい。(後藤 茂樹)

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