プロ野球選手たちが自身の登場曲に込める強い思い ソフトバンク・井上は…

[ 2023年9月9日 08:30 ]

ソフトバンク・井上

 各本拠地で流れる選手の登場曲のルーツを聞くのが好き。というか会話の取っかかりに抜群なネタだ。担当ではないので聞けないが、ZOZOマリンで大音量で流れるロッテの左腕・坂本光士郎の「愛の世代の前に」(浜田省吾)は抜群。福岡に住む“ハマショー”ファンの母に中古アルバムCDを贈ったほどイチ推しだ。

 担当のソフトバンクでは井上朋也内野手が、6日のロッテ戦で1軍デビューした。高卒3年目、2003年(平3)生まれの20歳。私がスポーツ新聞社に入社した年に誕生した。世代のギャップを感じる。なのに登場曲がずっとシンガーソングライター・中島みゆきの名曲「ファイト!」。シブすぎるやろ、と思って迷わず聞いた。

 「高校のときに映画“糸”を見て友達とええやんってなって。それでファイト!です」

 あ、映画からの影響パターンか。曲自体は1983年のアルバム「予感」の収録曲。94年に保険のテレビCMでさらにブレークした。我々はCMのイメージだが花咲徳栄(埼玉)で50本塁打した右の大砲候補は2020年夏に公開された邦画からインスパイアされたという。世代が若い。

 そんな井上。6日のロッテ戦で初昇格、初スタメンを果たすと2打席目に西野からプロ初安打となる中前打。6回2死で2打席連続となる中前打を放ち、初マルチ。チームも快勝し、初のお立ち台登壇と、初もの尽くしでのデビューとなった。

 選曲に加え、しゃべりもシブいのが井上。

6日に続き、7日の同戦でも試合前の声出しを任されていた。初回は球団マスコットでもある鷹(ホーク)の特長を説明する、うんちくを披露。7日は相手先発のメルセデスにかけた。「僕のお父さんはボルボで働いているので、さすがに負けられん。ボルボのチーム一丸となって勝ちましょう」。ベンチ前の円陣でのベンツ攻略ネタでエンジンをかけた。親父ギャグも切れる。

 井上は19年ドラフト1位で入団。ソフトバンクとは“糸”でつながった。藤本監督も登場曲を背に向かう打席のオーラから期待している。「何か、いい雰囲気を持っているよね。スイングを入れてくるし、ツキもいいよね。若々しいし面白いんやないか」。まさに「ファイト!」井上と思っている。(記者コラム・井上 満夫)

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