【内田雅也の追球】復調への「対左」「直球」 きっかけつかんだ佐藤輝 次は直球引っ張っての安打を

[ 2023年6月15日 08:00 ]

交流戦   阪神8―3オリックス ( 2023年6月14日    甲子園 )

<神・オ>初回、佐藤輝が2点適時二塁打を放つ(撮影・後藤 大輝)
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 俗に「左対左」は打者が不利という。多くは慣れの問題だ。一般に左打者の対戦成績も左投手の方が悪い。投手も打者も右が多いため「左対左」は対戦が少ない。

 もちろん例外もある。この夜、3試合ぶりに先発メンバーに復帰した阪神・佐藤輝明である。オリックスの予告先発が新人の左腕・曽谷龍平だったのに対し、監督・岡田彰布は先発復帰させた。

 試合前までセ・リーグ30傑27位の打率・221だった佐藤輝は右投手に・205だが、左投手には・269だった。

 右投手に対し右半身が開いてしまう悪癖が出ているようだった。だが、背中側から投球が来る左投手にはできるだけ開かないように我慢する。この姿勢が好結果を生む。

 佐藤輝に限らず、左打者が不調時には、左投手を打つことが復調につながることが多い。

 プロ野球歴代最多3085安打の張本勲(本紙評論家)は左打者で左投手も苦にしなかった。それでも「左対左」の打者不利を認めたうえで<自分のバッティングの状態が悪いときは逆にいい方向に作用する場合がある>と著書『最強打撃力』(ベースボール・マガジン社新書)に記している。<なぜなら欲がなくなるからだ>と強引さを戒められた。<冷静かつ謙虚な気持ちで打席に入れた。それが好結果につながることも多かった>。

 果たしてベンチの予想(あるいは期待)通り、佐藤輝は打った。1回裏1死二、三塁、曽谷の外角低め151キロ直球に踏み込み、右半身が開かずにたたいた。打球は左翼フェンスを直撃する適時二塁打となった。張本の言う無欲で謙虚な姿勢だったかもしれない。安打は7日楽天戦(楽天モバイル)以来、5試合、16打席ぶりだった。

 直球を打ったのも明るい材料だ。岡田は前夜、佐藤輝について「まっすぐを打ってのヒットがずっと出ていない。やっぱりまっすぐを打ち返せないと」と指摘していた。

 佐藤輝が直球を安打するのは5月26日、巨人戦(甲子園)で鈴木康平からの左前打して以来、20試合ぶりだった。

 変化球を打った5回裏の右前打も7回裏の中堅大飛球もあった。左投手と直球を打って復調へのきっかけをつかんだ。

 次は5月24日、ヤクルト戦(神宮)で田口麗斗から右翼線二塁打して以来となる、直球を引っ張っての安打を見たい。そうなれば本物である。=敬称略=(編集委員)

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