【内田雅也の追球】責任問題と敗者の教訓

[ 2022年4月15日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1ー4中日 ( 2022年4月14日    バンテリンD )

<中・神>6回 2死一、三塁 二ゴロに倒れる佐藤輝(投手・柳)(撮影・成瀬 徹)
Photo By スポニチ

 貧打は窮まり、この夜はゴロの山だった。完投の柳裕也に27アウトのうち三振は6。残る21アウト中、ゴロで18アウト(併殺2)を喫した。

 2番に入れた佐藤輝明は無死一塁で二ゴロ併殺打、2死一、三塁で二ゴロとブレーキとなった。打った策はことごとく裏目と出る悪循環が続く。

 開幕17試合でわずか1勝(15敗1分け)はプロ野球史上最悪の惨状である。比較になる1979年の西武は17試合目に2勝目をあげていた。

 敗戦の責任は監督にある。矢野燿大も先刻承知の上だろう。ただし、監督交代、途中休養させれば事態は好転、問題が解決するだろうか。

 大リーグの名フロントマン、サンディ・アルダーソンが勝敗は「偶然の出来事が支配している」と語っている。ロジャー・エンジェルの『球場(スタジアム)へ行こう』(東京書籍)にある。
 「とは言っても必ず誰かが結果に対する責任を負わされる」。一方「時には何もしないという決断を下すこともある」。

 阪神のフロント陣もただ黙って見ているだけではなかろう。アルダーソンも「一人で管理できる物事の範囲は限られている」とフロント自身の責任も示している。

 大リーグの名将、スパーキー・アンダーソンは自称「勝利中毒者」だった。タイガース監督時代の1989年、開幕から負けがこみ「精神的消耗」で休養となった。<48時間の仕事を24時間のうちに詰め込もうとしていた>とダン・イーウォルドとの共著『スパーキー! 敗者からの教訓』(NTT出版)に記している。ベンチで矢野は苦しそうな顔をしている。すべての仕事と責任を負おうとしてはいないか。

 スパーキーは1カ月で復帰しチームを立て直した。監督の仕事は<チームの能力をすべて発揮できるような状態にもっていくことだ>と悟った。<試合の結果まで左右することはできない。できるのは、ただチームの状態を整えて、あとはなりゆきに任せる>。そして<ベストを尽くせば、負けることは恥ずかしいことでもなんでもない>。

 うつむき加減の頭をあげて、戦うしかないのだ。きょう15日からは甲子園での巨人戦。猛虎として、満員観衆の前で堂々戦いたい。 =敬称略=(編集委員)

続きを表示

2022年4月15日のニュース