佐藤 ダル以来の完投勝利!次は菊池と対決だ

[ 2009年8月19日 06:00 ]

<日大三・東北>9回2失点の好投を見せた東北・佐藤

 【東北3-2日大三】みちのくの怪腕は菊池だけじゃない。第91回全国高校野球選手権大会は18日、甲子園球場で行われ、第1試合で東北(宮城)の右腕エース・佐藤朔弥投手(3年)が、今大会出場校中で最高打率・488を誇る日大三(西東京)の強力打線相手に163球、12奪三振の熱投で2失点完投した。同校の甲子園完投勝利は04年のダルビッシュ(現日本ハム)以来5年ぶり。20日の3回戦では菊池雄星投手(3年)擁する花巻東(岩手)との“東北ダービー”に挑む。

【試合結果


 163球目。最後の打者を空振り三振に仕留めると、佐藤は小さくガッツポーズをつくった。

 「後半になっても体は切れていたし、被安打の多さは気にならなかった。走者が出てからこそ勝負ですから、気持ちで投げました」

 2回から8回まで毎回走者を背負いながらも、それがエースの誇りとでもいうように、勝負どころでは決定打を許さなかった。抜群の制球力だった。右打者にはスライダー、左打者には外に逃げるチェンジアップで強振させなかった。最大のピンチは8回。1死一、三塁、カウント2―1から仕掛けられたスクイズも落ち着いて外し、ファウルでスリーバント失敗を誘った。終わってみれば、12奪三振。「変化球を低めに集めてゴロを打たせるつもりだった。三振はたまたま」と照れたが、同校の甲子園完投勝利は04年にダルビッシュが2回戦・遊学館(石川)戦で完封して以来。「ダルビッシュさんは凄い人なので…」とはにかんだが、表情は一気に緩んだ。昨年9月。部員間の暴力問題で対外試合が6カ月、部活動も2カ月半禁止された。その冬場に、多い時には1日10キロを走り込んで球速アップにつなげた。同時に、「粘り強さと、冷静な心」を得た。

 好きな言葉は中学時代の恩師から贈られた「桜梅桃李(おうばいとうり)」。それぞれの花に個性、美しさがあるという意味だ。あす20日の3回戦では今春センバツ準優勝の花巻東と対戦する。エースの菊池とは中3時代、ともにシニアの東北選抜に選ばれたこともある。それ以来の友人で、8日の開会式でもエールを交換した。「投げ合えるのはうれしい。でも菊池は菊池。僕は自分のピッチングがしたい」。それも「桜梅桃李」を座右の銘とするからこそだ。

 それでも、今は負ける気がしないのが本音。名は朔弥(さくや)。朔は「ついたち」とも読む。父・禎弘さん(46)が91年11月1日生まれの愛息に「何にでも1番になれ」と期待を込めて命名した。父の思いを実現するためにも、東北ダービーで敗れるわけにはいかない。

 ◆佐藤 朔弥(さとう・さくや)1991年(平3)11月1日、宮城県生まれの17歳。小3で三本木ファイターズで野球を始める。三本木中では宮城大崎シニアで東北大会3位。東北選抜にも選出された。東北では1年秋からベンチ入り。趣味はサイクリング。将来の夢は「幸せな家庭を築くこと」。家族は両親と姉、妹。1メートル75、70キロ。右投げ右打ち。

 ≪我妻監督「信じられない」≫西東京の雄に競り勝った東北の我妻監督は「勝ったのが信じられない。佐藤が粘って投げてくれた」と大きく息をついた。昨年11月に部内不祥事の責任を取った五十嵐監督からチームを引き継いだ。27歳は作新学院・小針監督(26)に次ぐ今大会2番目の年少指揮官だ。東北2年の99年春に控え投手として甲子園出場。3年時は主将を務めた。当時の監督は現九州国際大付の若生監督。「甲子園に行くには走塁、守備、バントを鍛えろ」の金言を授かり、それを実践してきた。この試合でも初回にスクイズを決めるなど、2回までにスクイズを計4度試みた。前日は「仮想・関谷」と自ら打撃投手も買って出た。次戦の花巻東戦には「東北球界を引っ張ってきたプライドを持って戦う」と出場21度目の意地を見せるつもりだ。

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2009年8月19日のニュース