勝者と同じ賛辞を 不屈のゴルフを見せた木戸愛 背中を押した亡き父の言葉

[ 2025年7月8日 13:47 ]

<資生堂・JALレディース・最終日>18番、バーディーパットを決めガッツポーズの木戸愛(撮影・西尾 大助)
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 【福永稔彦のアンプレアブル】敗者にも勝者と同じだけの賛辞を贈りたくなる戦いがある。女子ゴルフの資生堂・JALレディースがまさにそうだった。

 最終日、永峰咲希(30=ニトリ)と首位に並んでいた木戸愛(35=日本ケアサプライ)は13年ぶりのツアー2勝目を目指し1番ティーに上がった。

 序盤はティーショットが定まらない。2番ではバンカーに、4番では林に打ち込んだ。それでもスコアを落とすたびにバーディーで取り返した。

 優勝争いは終盤までもつれた。16番でバーディーを奪った永峰が一歩リード。1打差で迎えた18番、木戸の第2打はピンを大きくオーバーして止まった。誰もが勝負あったと思ったはずだ。

 しかし木戸は諦めていなかった。12メートルの下りのパットは右に切れながらジャストタッチでカップに落ちた。起死回生のバーディー。ギャラリーの大歓声がこだました。

 プレーオフで敗れ、勝利にはつながらなかった。それでも記憶に刻まれる見事なクラッチパットだった。

 「やっぱり悔しい。でも、最後まで諦めないでやっていると、ああいうこともあるんだということを体感できた」。全力で戦い抜いた達成感がにじんだ。

 35歳。ベテランと言える年齢だが、ルーキーのような清々しいプレーだった。ボギーを叩いても奮い立ち、背筋を伸ばして次のホールに向かい、バーディーを奪い返す姿は、まるで何かに背中を押されているように駆動力にあふれていた。不屈のゴルフで見る者を魅了した。

 力を与えてくれたのは亡き父・修さんだった。木戸は「ずっと見守ってくれていると思う。それは凄い自分のパワーになっている」と打ち明けた。

 詳しい説明は不要だろう。修さんは元プロレスラー。アントニオ猪木らとともに新日本プロレスの旗揚げに参加し、寝技や関節技を中心に戦い「いぶし銀」の異名を取った。

 引退後は、ゴルフに打ち込む愛娘のサポートにも力を注いだ。木戸がプロになるとツアーに同行し、椅子付きの杖を手に18ホールをついて歩いた。椅子に腰掛けてスイングに目を凝らし、打ち終えると椅子を畳んで歩き始める。そんな光景をよく見かけた。

 23年12月に亡くなったが、木戸にとっては心の支えであることに変わりはない。写真をヤーデージブックに挟んで、お守り代わりにしている。

 首位タイに浮上した第3日のラウンド後には「父の言葉が今でも自分の背中を押してくれているので、いい報告をしたい」と神妙な面持ちで語った。

 「一番胸に刻んでいる言葉は?」と尋ねると「一生懸命前向きに頑張っていればいい日が来ると言い続けてくれていたので、それを信じて頑張りたい」と声を詰まらせ、頬を伝う涙を拭った。
 ツアー史上最長ブランク優勝にはわずかに届かなかったとはいえ2位になったのは9年ぶり。復活の第一歩を記したのだから天国の修さんにも胸を張って報告できる好成績だ。

 しかし木戸の考えは違った。ここで止まっているわけにはいかない。敗戦後、修さんの金言をもう1つ明かした。「最後は自分でつかんで乗り越えていかないといけないという言葉ももらっていたので、ここをしっかり自分で乗り越えられるように頑張りたい」。力強い口調だった。(スポーツ部専門委員)

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