河村勇輝の恩師・陸川章氏が語る教え子の魅力 17日WOWOWでNBA Gリーグアップネクストゲーム

[ 2025年2月13日 12:00 ]

河村勇輝(c)Getty Images
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 WOWOWは2月17日(月)に「生中継!河村勇輝&富永啓生出場予定NBA Gリーグアップネクストゲーム2025」を放送・配信する。この試合には今シーズンからメンフィス・グリズリーズと2way契約を結んだ河村勇輝とインディアナ・マッドアンツとエグジビット10契約を結んだ富永啓生が出場する。

 今回は試合に先がけて、河村が恩師と仰ぎ、彼が2年間プレーをした東海大学バスケットボール部の監督で、WOWOW NBAの解説も務める陸川章氏にインタビューを行い、教え子の成長やその魅力、現在の活躍などについて語ってもらった。

 ――河村選手の活躍はご覧になっていますか。
 「くまなく見られているわけではないです。ただグリズリーズでのプレー時間はチェックしていて、その部分のハイライトを見ていますよ」

 ――アメリカへ渡って1年目からあれほどの活躍を見せるとは多くの人が予想していなかったと思います。陸川さんはどのように見ていますか?
 「自分の課題を明確にして、それらを全部クリアして、また次のステップに上がっていくところが、彼の良さであり彼の“らしさ”です。アメリカに行っても物怖じせず、ちゃんと自分のゴールを見据えています。だからGリーグでもちゃんと答え(結果)は出しています。アシストは元々良いものがありましたが、周りから課題だと言われていた3Pシュートも克服してきました。この間は1試合で7本の3Pを決めましたよね。3Pを見ていても、シュートはクイックでアーチが全然違います。練習を相当していて、工夫もしながら何をすれば課題をクリアできるのかなど考えているのだと思います。彼の考える力と実践力は素晴らしいです」

 ――陸川さんは河村選手を直接指導していますから、多くの人たちとは驚きのレベルが違うかもしれませんね。
 「彼だからできているのかなと思います。彼はヘッドコーチ、監督から求められていることやチームが求めるものが何かを理解して、実行してみせます。もっと自分の色を出しても良いところでも、まずそこを優先するんです。その中で、自分の足りないところや必要なことに対してチャレンジしていきます。クリアしたらまた次のステップに上がっていくのです。本で“ジャイアントリープ”、つまり大きな飛躍という言葉を目にしました。思い切り高い目標を設定して限界に挑戦する、そしてそれをクリアしたら次のステージへと「リープ」を繰り返していく。彼はそんな選手だなと感じています」

 ――河村選手が契約したグリズリーズというチームについてはどのような印象ですか。
 「良いチームですよね。みんな勇輝のことが好きだし、ジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ)も勇輝を兄弟かのように応援してくれていますよね。勇輝が加わったことでモラントも落ち着いて、チームがファミリーになって、今ぐーんと順位も上がってきている(現在35勝17敗で西カンファレンス全体2位)。“勇輝効果”があるんじゃないかなと勝手に思っています(笑)」

 ――「NBA Gリーグ アップネクストゲーム2025」で河村選手にはどのようなプレーぶりを期待しますか。
 「彼が出るとアップテンポのゲームになると思いますし、それをみなさん期待しているのではないでしょうか。アップテンポなゲームから目を見張るようなノールックパスによるアシストなどでファンは勇輝の虜になったと思います。それプラス、周りを活かすだけでなく、隙あらば得点する姿も見せてほしいですね。この間も、相当距離があるところからディープスリーを決めていましたね。NBAの本契約を勝ち取るためのアピールの場だと思って魅せてほしいと思います」

 ――オールスターというお祭りですが、これからさらに上を目指す河村選手にとってはある意味でこれも実力を示す大切な試合なのですね。
 「我々の時代というのは、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)とマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズ等)が出場していた時で、オールスターでもみんなガチンコでした。やはり“1対1で負けないぞ”など自身をアピールしてやるんだという(姿勢)のが良いのではないかと思います。だから、勇輝も“NBA Gリーグ アップネクストゲーム2025”のMVPを取るくらいのつもりでやってほしいです」

 ――河村選手は、さきほど陸川さんもおっしゃっていたノールックのパスをアメリカでもかなり披露している印象です。
 「それはやはりエンターテイメントですし、どうすればお客さんを喜ばせられるのかをわかっていると思います。昔のガードはマジック・ジョンソン(元ロサンゼルス・レイカーズ)にしてもジョン・ストックトン(元ユタ・ジャズ)にしてもアシストで魅せていた部分があって、私も大好きでした。それが段々と“点を取ってなんぼ”といったガードが主流になっていきました。ですから、勇輝は逆にいうとオールドスタイルかもしれないです。周りを活かしながらチームで点を取って勢いづいていくスタイルは、ノスタルジックなもので、皆が“ワーッ”と応援したくなるものだと思います。あとは身長172cmであれだけの活躍を平気でしていて、みんなが憧れ、子どもたちが夢を持てます。それは日本でもアメリカの人でも一緒なのだと思います」

 ――河村選手がアメリカのファンの間でも人気があるのは、そういった「オールドスタイル」を彼らが新鮮に感じているのではないかということですね。
 「そうですね。それプラス、彼の人間性もあると思います。野球の大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース)にも近いところがあると思いますが、みんなから愛されるキャラだと思います。モラントなどのグリズリーズの選手たちのコメントを読んでも、“彼に教えるスラングはもうない”と言いながらみんな彼を信頼していますよね。この短い時間でこれだけ愛されているというのは、彼の人間性なのだと思います。グリズリーズだけではなく、他のところへ行っても“勇輝を出せ”とみんなが言うくらいなので、すごいですよね。私が見た試合では、勇輝が(試合に)出たから、ケガをしてロッカーへ下がったモラントが足を引きずってコートに戻ってきました。スーパースターのモラントがそういうことをする。やはり、彼の持っている人間性ではないですかね。チームメート全員が好きだって言っています。だから、本契約してやってよって言いたいですけどね(笑)」

 ――河村選手のグリズリーズとの当初の契約は「エグジビット10」(NBAで定められた最低年俸、無保証での契約)というものでしたが、この時、河村選手から陸川さんへ連絡はあったのでしょうか。
 「連絡はありました。(エグジビット10契約の時は)彼から電話がかかってきて“これから発表になります”と。また、(2way契約の時は)私がリーグ戦の最中で、彼から電話があり、伝えてくれました。それで彼に“おお、よかったな!うちはな、日大と日体大に勝ったぞ”と言ったら、“見てました”って。なんで見てるんだよって(笑)。すごくいい子なんですよ。本当に義理人情に厚いです」

 ――エグジビット10からプレシーズンの間に2wayへと契約が切り替わりました。これだけ早く変化していったことについてはどうお感じですか。
 「彼が大学2年の時でしたが、リーグ戦が終わって1か月後にインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)を控えているという時に彼が「相談があります」と言ってきました。その時はコロナ禍で試合数は少ない、春のリーグ戦もない、オータムカップはトーナメント制でした。で、彼は“パリオリンピックに出たいのでプロになります”と(河村は大学2年生終了後に東海大を中退しBリーグ・横浜ビー・コルセアーズとプロ契約している)。つまり、彼には目標や夢があって、ちゃんと考えて、クリアしていくことが大事だということがわかっている。ですから(エグジビット10契約を)結んで、こうなっていくだろうなと思っていました」

 ――彼の中で確固たるビジョンがあるわけですね。
 「そうなんです。で、それを実現させるためには何が必要か、どのような努力をすれば良いのか、何をクリアしないといけないのか、クリアしたら次は何をしたら良いのか、というのが彼には見えているような気がします」

 ――NBAでもGリーグでも競争は激しいとは思いますが、その中でハードルをクリアしていく興奮や楽しさを覚えているのかもしれませんね。
 「Gリーグでは、試合をしてまた次の試合へ向けて移動しなければならない大変な環境ですが、彼はそれを楽しみで勉強になると言っています。すごい適応力だし、強いです。ベンチでプレーができないときでも、1つ1つのプレーで立ち上がって応援をしていて、ああいう姿は仲間も盛り上がります。嘘のない姿ですからね。本気になって喜んでいるのは、見ていてわかります。学生たちにもよく言いますよ。自分のプレー時間がなくて文句を言っているならば、勇輝のことを見たほうがいいよと」

 ――河村選手は海外での留学をせずにBリーグからNBA入りをした初めての日本人選手となりました。ここにはどのような価値を見出しますか。
 「色々なパスウェイ(道筋)があって良いと思います。日本の高校・大学行こうが、オーストラリアに行こうが、良い。勇輝の場合は大学には2年間しか在籍していませんでしたが、日本の高校、大学でプレーをすることを選んで、今があります。彼は日本で一番多いポジションのガードで、172cmなので、絶対に夢と希望を与えていますし、可能性を感じさせてくれています。八村塁選手(ロサンゼルス・レイカーズ)や渡辺雄太選手(千葉ジェッツふなばし)がNBAに行くまではみんな“無理だよ”と考えていたと思います。その次は“彼らはアメリカの大学に行ったからNBAへも行けたんだろう”と考えられていたかもしれません。しかし勇輝はそれを打ち破ってくれました。今後も子どもたちのためにもっとブレークスルーしてくれと思っています」
 ――東海大時代の河村選手は陸川さんとNBAのことについて話をしていましたか。
 「日本代表の選手になってほしいとは私はいつも言っていましたし、彼も海外に挑戦したいとは言っていたかもしれませんが、NBAのことは話していたかどうかわかりません。選手たちに“夢は何か”と聞いた時に“NBAです”と言ってきたら、“いいね”とは伝えます。でも勇輝は多分、そんなこと言ったことないです。だって、“教員になりたい”と言っていましたから。でも、沖縄であったワールドカップなどを経て彼の中で(NBAが)見えてきたのではないでしょうか」

 ――東海大で陸川さんの下でプレーしていた頃と今では、河村選手はどのような部分が一番、成長したと感じていますか。
 「彼は当たり前のことをきっちりやります。どういうことかと言ったら、彼は2年生まで東海大学にいましたが、フルで単位を取っていましたし、優秀な成績をおさめています。さらに教職も取っています。彼は何事に対しても本気です。だからこそ、(様々なハードルを)クリアできるのかなと思います。
アメリカでは英語でもインタビューに答えていますよね。東海大学バスケットボール部が横浜BCと練習試合を行なった時には、彼が外国人選手たちと英語で話しているのを見て、しっかり準備しているな、次のステップを考えているなと思いました。また最近は自分に自信を持っているというか、“絶対やれるんだ”と思いながらプレーや発言をしている印象を受けます。だから、彼は必要なところで必要な成長をしていると思います」

 ――河村選手は肉体の成長にも目を見張るものがあり、東海大時代と比較すると相当、筋肉をつけたように思います。
 「硬い筋肉をつける必要はないですが、筋肉はプロテクターになります。今のバスケットって本当にフィジカルでケガもしますから、筋肉は絶対に必要なものです。東海大学でもBリーグに行きたいのならば絶対に(肉体的)土台を作らなきゃだめだと話しています。技術とか戦術、理解力や人間力も必要だという話もしていて、勇輝の場合はそれらのすべては持っていたのですが、(東海大学に在籍)当時、体はまだ細かったですね。だから体の土台を作らないとだめだという話は彼にもしていて、彼は真面目だからそれもクリアしていました。横浜BCへ行ってからはその大切さをもっと感じたと思います。代表でのプレーを始めてからはさらにその必要性を感じたはずです。今の彼の体は全然違うものになったと感じます」

 ――河村選手のアメリカでの挑戦はまだ始まったばかりです。今後、彼にはどのような成長や活躍を見せてほしいと考えていますか。
 「現時点で、Gリーグでは既に彼の存在感を発揮して、認められていると思います。でも私は、彼がNBAでも必要とされる選手に絶対なれるだろうし、彼としても“これでいいや”と思うはずがないと思っているので、どんどん上に挑戦し続けて、ステップアップしていってほしいです」

 ――まずは本契約を目指すというところですね。
 「おそらく彼の中でもそれを目標として持っていると思います。ただそれも最終ゴールではなく、通過点としているはずです。そのさらに上を目指してほしいですし、モラントとの共演なども楽しみです」

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