【元横綱稀勢の里コラム】久々の夏巡業、ファンにも力士にも貴重な機会に

[ 2022年8月3日 07:00 ]

二所ノ関親方
Photo By スポニチ

 おかげさまで7月の名古屋場所では、部屋所属18人中13人が勝ち越しを決めることができました。夏場所後に茨城・阿見に部屋を構えてから初の本場所。13人のうち6勝1敗は7人でした。序ノ口は今場所から番付にしこ名が載った日体大出身の高橋が千秋楽の決定戦を制し、部屋初の優勝力士となりました。春場所初土俵の林龍、林虎の双子もともに6番。立派な宿舎を提供していただき大変いい場所となりました。各自が奮闘した一方で、反省、課題も感じていたことでしょう。現状に満足するのではなく、夏場にしっかりと鍛えて9月の秋場所に臨んでほしいものです。

 5日からは東京の立川市で夏巡業が始まります。コロナ禍で中止が続いていたので、巡業そのものは約2年半ぶり。関東地方の5会場ですが、再開されたことは何よりです。全国各地を回る巡業は相撲普及という意味でも不可欠な事業です。本場所になかなか見に行くことができない地方のファンにとっては、お相撲さんと間近で触れ合える貴重な機会。迫力あるお相撲さんを見て力士を目指す子供も少なくはありません。ファンとの記念撮影やサインなど、力士も積極的に交流してくれるのはありがたいことです。

 私も現役時代にはいろんな場所に行きました。1日興行が多かったものの、その地域ならではの食事などを楽しみにしていました。個人的には普段あまり行くことがなかった広島などが好きでしたね。力士たちにとっては、技量のレベルアップを見込める重要な場所です。巡業を通じて体つきが変わってくる力士もたくさん見てきましたし、昔の力士はしっかり体づくりをして、そのまま場所前の稽古につなげていました。

 稽古ではいろんな部屋の力士と稽古ができます。私は出稽古をしなかった部屋に所属していたので、ひと皮むける場所にもなりました。小兵力士や突き押し、四つ相撲。普段の稽古では体験できない人と稽古することで自分に足りないものなどを発見できる利点があります。体育館の土俵だけが稽古ではありません。屋外の地面などに円を描いた即席の土俵で汗を流す「山稽古」は巡業ならではの光景。私は好きでした。

 夏巡業は力士の参加人数を抑えるなど感染対策を十分行った中で実施されます。触れ合いも制限されますが、再開を待ち望んでいるファンの笑顔が目に浮かびます。一日でも早くコロナ禍が収まり、全国各地で巡業が行われることを切望しています。 (元横綱・稀勢の里)

続きを表示

2022年8月3日のニュース