樋口美穂子コーチから松生理乃へ「芯は強く。でも、しなやかに、柔軟に」

[ 2021年10月27日 05:30 ]

北京五輪あと100日

ジャパンOPで演技を終え抱き合う松生理乃(左)と樋口コーチ(撮影・小海途 良幹)
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 努力の継続は、簡単そうで難しい。心技体を磨き続けられることも、一つの才能だ。フィギュアスケート女子の松生理乃(中京大中京高)を指導する樋口美穂子コーチは、松生と初めて会った時の印象を覚えている。「ひ弱そうな感じ。黙々と1人でずっと練習している真面目な子でした」。そんな第一印象だった選手が、大きな夢へと歩みを進めている。

 小学3年の時にグランプリ東海クラブの門を叩いた松生は、ぜんそくやアレルギーで入退院を繰り返しながらリンクに通った。早ければ3年生でも跳ぶ選手がいる2回転半(ダブルアクセル)には2年の時間を費やし、6年生で初めて跳べた。樋口コーチは当時の松生の姿を今でも思い出せる。「なかなか跳べなくて。でも、ひたすらやり続けて、跳べて。試合(結果)が良くなくても、次の日から黙々と練習し続ける。それで伸びてきた」。
 ダブルアクセルをモノにすると、前向きのアクセルを除く3回転ジャンプ習得は早かった。全5種類をすぐに跳び、大会成績も上向いた。「これは続けたらいけるかも」。そう感じた樋口コーチは、参戦が決まった19年ジュニアGPシリーズ出場前に試練を与えた。「毎日SP2回とフリー2回をノーミスでやる」。最初は7回もかかった。でも、決して諦めずにやり切った。

 150%の練習を続けることで、本番で100%の力が出せる。樋口コーチが説いた隙のない練習によって殻を破った。「普通の子は時間が来て“できなかった”とやめちゃうけど、あの子は2回できるまでやる。それは凄い。そこからちょっと一つ階段を上がった」。昨シーズンの20年全日本ジュニア選手権ではSP、フリーともノーミスをそろえて優勝。全日本選手権でも4位に入り、さらなる飛躍を目指している。

 今季からシニアの世界に飛び込んだ。今でもトリプルアクセル完成、さらに振付の確認に余念がなく「永遠に曲をかけ続けている」と樋口コーチは頼もしそうに笑う。「あの子ぐらいの能力がある子は凄くたくさんいると思うんですよね。みんなあの子ぐらい練習し続けられたら、みんなあそこまでいけると感じています。ただ、それがなかなかできない子が多い。それをあの子はできたから、ここまで来られたのかな」と分析する。さらに男子で18年平昌五輪銀メダルの宇野を引き合いに「もっと上手になりたいという気持ちを持っているのは昌磨とちょっと似たところがある」と語った。

 シニア1年目から勝負の五輪シーズンが始まった。日本女子の現状について樋口コーチは「3枠に入るというのはかなり厳しい。どの方も、そう思って練習している」と話す。多くの選手が挑戦する大技トリプルアクセル成功が行方を左右しそうだが「それだけではないと思います。足し算で点数が決まるので総合力が必要」。ジャンプだけでなく、スピン、ステップ、表現力。全ての面で上質な演技を目指している。

 振付も担う樋口コーチは今季、松生のフリー曲に宇野らも演じた「月光」を授けた。「あの子は努力してくれる。きっと課題を与えたら、それをこなすまでやるだろうなと思いました」。名曲の調べに乗せ、自らの力を出し切った先に道は開かれる。樋口コーチから「型から外せないくらい真面目」な松生へ。いつだって贈る言葉は変わらない。「芯は強く。でも、しなやかに、柔軟に」――。(大和 弘明)

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