異業種も参入!ワークマンが厚底ランニングシューズ 低価格&人気の秘密を聞いた

[ 2020年6月19日 09:30 ]

ワークマンの厚底シューズ「アスレシューズハイバウンス」
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 新型コロナウイルス感染拡大により、マスク分野に家電大手のシャープなど異業種が参入したのは記憶に新しい。ランニングシューズ市場にも、スポーツメーカーだけではなく“異業種”が厚底を投入して市民ランナーの注目を集めている。

 作業服大手のワークマンが今年4月下旬に「アスレシューズハイバウンス」という厚底シューズを発売した。ワークマンといえば、作業靴をはじめ、作業着など働く男の店というイメージだったが、最近ではデザイン性を重視するなどして、若い女性にも人気なのだという。

 “ワークマン厚底”は厚さ4センチの独自開発ソールで足の疲労を軽減。価格は1900円と衝撃プライスだ。厚底ブームをけん引しているナイキのレース用最新モデルは3万円以上。他のメーカーも2万円は超えるため、厚底を履いてみたいという人のエントリーモデルとしては最適な一足になりそう。開発を担当した同社の柏田大輔さん(45)にシューズの秘密を取材してみた。

 まずは誰もが目を引く低価格の秘密を聞いた。「これまでの蓄積といえば全てだが、それではあまり面白くないですよね」と前置きした上で「コストダウンできたのはアッパー素材ですね。ナイキでもあるがニット状の1枚のニット。それを作る技術が安くなってきました」とタネ明かしをしてくれた。

 何枚ものパーツを組み合わせない分、1枚ニットは工賃も安いのだという。「縫わないのでばらつきも少なく、商品ロスも少ない。2色展開で白と黒を大量に仕入れられるのでボリュームディスカウントも合わせてコスト削減している」という。

 開発者の想定を上回る売れ行きだそうで、1週間に8000足ほど売れた実績もある。柏田さんは「うちで売っている靴の中でも上位の売れ筋です。ソールの生産が追いついていかない。それでちょっと時間がかかっています」とうれしい悲鳴を上げていた。

 ランナーにとって値段以上に気になるのが性能。そちらはどうなっているのか。柏田さんは「疲れにくい靴が欲しいという要望で開発がスタートし、突き詰めたものが厚底。タイムを競うとかそういう目的で履かれるとそうじゃない」と意外な答えを返してくれた。「軽いジョギングやウオーキングなど長い距離を履く人に履いてもらいたい。(ハイバウンスで)タイムが出る人は元々のポテンシャルが高いんです」とあくまで入門用を強調した。

 柏田さんも実際に試走し500キロ走ってもソールはへたらなかったという。ただ、スリッポンタイプなので足首のホールド感は調整の余地ありと課題に挙げた。社内のランナーからも同様の辛口意見をもらったといい「次回作ではホールド感を追求したり、つま先が上を向いているなど推進力をテーマにしたい」と展望した。

 ネット上でもレビューが相次いでいる。タレントの森脇健児さん(53)は試走した感想を自身のYouTubeに投稿。フルマラソンも走る森脇さんはランナー目線で「足のしまりがこない。スピードの切り替えがしにくい」と課題を指摘したが「すごいです。意外とワークマンもええとこいくんちゃう?初心者にとって全然ありです」と高評価。「次はマジックテープバージョンが欲しい」と次回作の要望もしていた。

 こう聞くと欲しくなるのが人間の性。1900円なので財布のひもも緩む。運動不足解消を目的に、いざ厚底を初体験と思いきや同社のオンラインストアでは品切れ。厚底デビューはお預けとなった。ある意味でワークマンの対極にあるナイキ最新モデルも一般発売と同時に完売。ネットでは高額で転売されていた。1年延期が決まった東京五輪熱は幾分下火になったような印象を受けるが、足下を巡る戦いは激化。異業種の参入も促す厚底人気、恐るべしだ。(記者コラム・河西 崇)

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