マイル侍“二刀流”1600メートルリレー、陸連に秘策あり

[ 2019年6月19日 09:30 ]

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昨年アジア大会で銅メダルの“マイル侍”。1走のウォルシュ(写真は5月・世界リレー)
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 来年7月24日開幕の東京五輪は20日で、あと「400日」になる。陸上の男子400メートルは、ウォルシュ・ジュリアン(22=富士通)、井本佳伸(19=東海大)ら期待の選手が活躍中。「先行策」と「オールジャパン体制」をキーワードにして、1600メートルリレーで初のメダル獲得を目指している。

 もしかしたら東京五輪で…と希望を抱かせるレースだった。
 5月の世界リレー大会(日産スタジアム)。男子1600メートルリレーで、日本は予選2組を1着で突破した。2走の19歳井本が序盤に飛ばして首位に立つ。3、4走は一度も先頭を譲らずゴール。今秋の世界選手権出場を決めた。決勝は4位(米国の失格で繰り上がり)。平均年齢21歳の若手軍団が、4月のアジア選手権金に続く上々の成績を収めた。

 日本陸連の土江寛裕短距離強化コーチ(45)は「2走で決まった」と期待の星を称えた。体力を均等に配分して400メートルを走るのではなく、終盤まで足をためるのでもなく、序盤に飛ばして粘る。これが日本マイルリレー(1600メートルリレーの通称)の戦略だ。

 巧みなバトンパスで16年リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した400メートルリレーと違い、個人の走力差がそのまま反映しやすい。世界に食らいつく方法があるとすれば、日本陸連の山村貴彦1600メートルリレー強化コーチ(39)は「流れに乗れば粘れる。(セパレートコースで争う)個人の400メートルでは勝負できなくても、誰かの後ろに付けば走りやすい」と、前半勝負の必要性を強調した。序盤にトップスピードに上げた方が、勢いで最後まで走り切れるというデータもある。

 流れに乗れるかどうかは1走次第。決められたレーンを走るため、力の差が出やすい要の走順を、400メートル日本歴代7位(45秒35)のウォルシュが務めてきた。父がレゲエ歌手のジャマイカ人という筋骨隆々の22歳だ

 「マイルリレーは昔、お家芸で強かった。道具もコーチングも発達しているのに、今はタイムが落ちている。4継(400メートルリレー)のようにもっともっと強くなりたい」

 かつて、五輪でメダルに手が届きそうな種目だった。96年アトランタで5位、04年アテネで4位に入った。しかし、08年北京から3大会連続予選落ち。ウォルシュはリオで予選最下位を味わった。
 個人の走力アップを目指し、昨年12月から3度、国内トップ選手を集めた合宿を行った。井本ら若手が成長してきた。しかし、タイムはまだ物足りない。世界リレーは3分2秒55。96年につくられた日本記録3分0秒76に1秒79も後れを取る。五輪メダル圏内の2分58秒台は遠い数字だ。

 ウルトラCがある。他種目の選手を起用する作戦だ。昨年のアジア大会は、ウォルシュ以外の3人を専門外で構成。100、200メートルの飯塚と小池、400メートル障害の安部を加え銅メダルを獲得した。3分1秒94は近年の中では好記録だった。マイルメンバーとして特に期待がかかるのが、リオ五輪400メートルリレー銀の飯塚。山村コーチは、飯塚の他にも「前半勝負」に適した200メートルの選手を引っ張り込み、「東京五輪はその時にいい状態の選手を使う」と、種目の垣根を越えたオールジャパン体制で臨む考えでいる。

 マイルリレー決勝は、来年8月8日に行われる。花形だけあって、競技場種目の最後を飾る(全体はマラソン)。ちょんまげ侍ヘアスタイルのウォルシュは「記憶に残るようなレースをしたい」と意気込む。400メートルが「リレー侍」なら、1600メートルは「マイル侍」。表彰台のライバルは英国、中米勢か。さあ、下克上を果たそう。

 ▽マイルリレー 4人がそれぞれ400メートルを走る。合計距離の1600メートルが約1マイルであることから、「マイルリレー」と呼ばれている。1走はセパレートコース、第2走者の2コーナーからオープンコースになる。男子のマイルリレーは、五輪、世界選手権ともに、マラソンを除いて競技場種目の最終種目として定着。男子100メートルの世界記録保持者ウサイン・ボルト氏がいた12年ロンドン五輪、11、13年の世界選手権は男子400メートルリレーに譲ったものの、ラストを飾る花形種目として世界で認知されている。

 《96年アトランタ 100メートル伊東で成功》他種目の選手を起用してマイルリレーで成功したケースがある。96年アトランタ五輪は、100メートル元日本記録保持者の伊東浩司を2走に抜てき。5位入賞と、日本記録樹立に貢献した。ウォルシュは「他種目にサポートをしてもらうという悔しさはあるけど、仕方ない部分もある。でもまだまだ上がるメンバー」と語り、400メートル内でも切磋琢磨(せっさたくま)していくことを誓った。

 《本番16枠へ 日本記録の青写真》東京五輪出場へ、9月28日から10月6日までの世界選手権(カタール・ドーハ)が重要な戦いになる。「マイル侍」はここで上位8チームに入れば、すなわち決勝を走れば、当確ランプがともる。  世界選手権代表は、27日からの日本選手権(福岡市・博多の森陸上競技場)を経て、最終的に9月16日に決まる。ウォルシュ、井本は濃厚。残りは流動的だ。昨年のアジア大会同様に、専門外の選手を起用する可能性が高く、来年の大舞台を想定した選考になると言える。

 東京五輪は16チームが出場する。世界選手権で上位8チームを逃した場合、来年6月29日までの持ちタイム上位8チーム(出場権を持つチームを除く)に入らなければならない。男子400メートルの日本歴代2位(45秒03)の記録を持つ山村コーチは「世界選手権で日本記録を更新すれば、決勝を逃したとしてもその中に入れる」と計算。ドーハでの3分0秒76切りを最低限の目標に掲げた。

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