木村沙織「先にスパっと」シーズン前に引退表明した理由

[ 2016年11月3日 10:00 ]

得点を決めガッポーズする東レ・木村沙織

 現役生活への別れの告げ方は、アスリートの数だけある。競技生活の絶頂で華麗に身を引く選手もいれば、周囲から「まだできる」と思われながら気持ちを固める選手、体がボロボロになるまで戦い、燃え尽きて引退する選手もいる。五輪などの大きな舞台は決断の契機になることが多い。バレーボール女子の木村沙織(東レ)が選んだのは先に引退を表明し、Vプレミアリーグを1シーズン戦い抜いてからコートを去ることだった。

 引退表明は自身のブログ。10月30日のVプレミアリーグ開幕戦後、初めて公の場で思いを語った。日本からの移動距離が長く、治安も不安視されていたリオ五輪に家族が応援に来られなかった。家族や恩師、ファンにプレーしている姿をしっかりと見せたい、というのが決意に至った理由だが、次の言葉に木村らしさが凝縮されていた。

 「説得されると気持ちが揺らぐタイプ。もし今季が終わって説得されても気持ちが揺らがないように、先に(引退と)スパっと言った」

 12年ロンドン五輪後、トルコリーグに参戦。12―13年のシーズンを終えて現役を引退するつもりだったが、当時日本代表を率いていた真鍋氏に説得されて翻意し、代表主将に就任した過去がある。期待されると「NO」と言えない自分を知っているから、今回は先に決意を表明した。

 今季昇格してきたPFUとの開幕戦は精彩を欠き、チームも敗れた。リオ五輪後、進退について悩み、チーム合流は開幕の1カ月前だった。「今季で最後」という高いモチベーションに今後、コンディションが追いついてくるはず。「結果を残すために、できる限りのことをしっかりやっていきたい」。ケガなく悔いなく、充実したラストシーズンになることをみんなが願っている。(杉本 亮輔)

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