白鵬 16年ぶり大技「呼び戻し」で29回目全勝ターン

[ 2013年9月23日 06:00 ]

<秋場所8日目>宝富士(左)を呼び戻しで破った白鵬

大相撲秋場所8日目

(9月11日 両国国技館)
 4場所連続優勝を目指す横綱・白鵬が97年春場所の横綱・貴乃花以来、約16年ぶりとなる「呼び戻し」を宝富士に決め、勝ち越しを決めた。「呼び戻し」は土俵の鬼と呼ばれた元横綱・初代若乃花が得意とした大技。また全勝ターンは29回目となり、自身の持つ最多記録を更新した。1敗で追っていた大関・鶴竜と平幕の嘉風は2敗目を喫し、1敗は大関・稀勢の里1人になった。
【取組結果】

 勝ち名乗りを受け、土俵下に降りた白鵬は祈るような気持ちで場内アナウンスを待った。電光掲示板に「呼び戻し」の文字。館内がにわかにどよめき、横綱も両腕を腰に当てたまま満足そうに表情を引き締めた。

 差し手争いを制した白鵬は右四つに組むと、左上手を引いて一呼吸置いた。次の瞬間、左で揺さぶり、差した右を返して宝富士を裏返しにした。幕内では、貴乃花(本紙評論家)が剣晃戦で決めて以来16年ぶりの大技。支度部屋では報道陣が質問する前に自ら口を開いた。「出ましたね。すくい投げになるかと思ったけど決まり手を見たら、呼び戻し。手応えがあった。初代若乃花さんの映像ほどはできなかったけど」

 出番前の支度部屋では、付け人相手に差し込んだ腕を返して何度も転がした。十分なイメージを膨らませて臨んだ土俵では、素早く右を差して圧力をかけながら土俵際に追い込んだ。「やるだけやってダメなら寄り切ろう」。開き直ってチャレンジした結果だった。

 実践したいと思ったのは、初代若乃花の花田勝治さんが10年9月に死去した際だったという。「どうしてこんな技ができるのか」。稽古場でさっそく披露したが、その相手が、くしくも当時新十両だった宝富士。本場所でも何度も繰り出したが、常に「すくい投げ」と判断された。次第に意欲も落ちていっただけに、ようやく認定され「長かったね。いいもん、見ただろ!」と感慨深げだ。

 大技を決めて自身が持つ歴代最多の全勝ターンも29回に更新。しかし、そんな大記録がかすむほどに、記憶にも残る一撃だった。

 ▽呼び戻し 大相撲の中でも最も豪快な技とされる。四つに組んだ時に、強引に相手の体を引っ張り込み、一度呼び込む体勢をつくる。その際に反動をつけ、相手の体が浮いたところを差し手を斜め上方に突き上げながら、上手まわしを離して相手を仰向けに倒す。力も技術も相当なものが必要とされ「幻の決まり手」とか、「仏壇返し」などとも呼ばれる。第45代横綱の初代若乃花が得意としていた。

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2013年9月23日のニュース