遼くん貫いた攻撃ゴルフ!涙のプロ初ツアーV

[ 2008年11月3日 06:00 ]

優勝インタビュー中、うれし涙を流す石川遼

 石川遼(17=パナソニック)がプロ転向後初のツアー制覇を果たした。男子ゴルフツアーのマイナビABCチャンピオンシップ最終日は2日、兵庫県加東市のABCゴルフ倶楽部(7217ヤード、パー72)で行われ、石川は3打差の3位からスタートし、4バーディー、1ボギーの69をマーク。通算9アンダーで深堀圭一郎(40=フォーラムエンジニアリング)を逆転した。17歳1カ月の優勝はプロとしてのツアー最年少記録で、アマ時代の昨年5月に15歳8カ月で優勝したマンシングウェアKSBカップ以来ツアー2勝目。優勝賞金3000万円を加えた今季の獲得賞金は7213万円となり、賞金ランキング6位に浮上した。

 80センチ先のカップが、はるか遠くに見えた。テークバックに入っても震えが止まらない。ゴルフを始めてから最大のプレッシャーがかかったウイニングパットを沈めると、石川は雄叫びを上げ、キャディーの加藤さんと抱き合った。あふれる涙をこらえきれず、優勝スピーチは涙声となった。
 「誰かに助けてほしいなと思うほど苦しいゴルフで、途中で泣きそうになっちゃいました。でも勝つまでは泣かないと思って、最後は必ずいいことが待っていると信じてプレーしました」
 今季開幕戦以来の最終日最終組。15番でカラーからのロブショットをピンそばに止めて深堀をとらえると、16番では「入ると思わなかった」8メートルを沈め、連続バーディーで単独首位に。だが、2打差をつけ、優勝目前で迎えた最終18番パー5でも持ち味の攻撃的なスタイルを失わなかった。左ラフからエッジまで170ヤードの第2打。グリーン手前に池があるにもかかわらず、果敢に2オンを狙った。
 「タイガー(ウッズ)はどうするか分からないけど、石川遼は狙う。“7Iで刻むのか”と自分に聞いてみたら即答だった。“刻まないでしょ”って」。ボールはグリーンに届かず池に転がり落ちたが、靴をはいたまま池に入ってのウオーターショットで3メートルにピタリ。最後まで見る者を魅了するゴルフで逃げ切った。
 今年1月に高校生プロとなり、開幕戦で5位に入ったが、4戦連続予選落ちなど壁にぶち当たった。数々の大型契約も重圧になり、ホスト大会での連続予選落ちは精神的にこたえた。「プロの中にこんな下手な自分がいていいのかと悩んだ」。ドライバーショットの練習量だけを支えに、アプローチやパットは先輩プロを見て学んだ。尾崎将の下で取り組んだアプローチはツアーでさまざまな芝を経験して上達。パットは谷口徹や片山の打つまでのルーティンをまねし、深堀からは平常心でプレーする大切さを教わるなど、スポンジのように吸収していった。
 今季の目標は来年のシード権獲得への態勢を築くことだったが、今回の優勝で再来年までの出場資格を得た。でも、石川は言う。「練習をしている時は自分が一番下手だと思ってやっていかなきゃいけないと思う」。姿勢は謙虚に、目標はあくまでもマスターズ制覇。プロの実力を証明したツアー2勝目で、その夢にまた一歩近づいた。

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2008年11月3日のニュース