錦織 “愛の苦言”をバネに4大大会初勝利

[ 2008年8月27日 06:00 ]

全米オープンテニスの男子シングルス1回戦でフアン・モナコを破った錦織圭

 全米オープンテニス第1日は25日、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われ、錦織圭(18=ソニー)が記念すべき4大大会初勝利を挙げた。世界ランク126位の錦織は男子シングルス1回戦で、同32位で第29シードのフアン・モナコ(24=アルゼンチン)を6―2、6―2、5―7、6―2で撃破。日本男子の4大大会シングルス勝利は05年全豪オープンの鈴木貴男以来3年ぶりで、全米オープンでの勝利は93年の松岡修造以来15年ぶりとなった。2回戦では世界ランク100位のロコ・カラスニッチ(25=クロアチア)と対戦する。(山口奈緒美通信員)

【全米オープン Go!アスリート 錦織圭】

 固い扉をこじ開けたのは、やはりこの18歳だった。試合不足のハンデやけいれんとも戦った錦織が、昨年16強のフアン・モナコから金星。最後にバックハンドのダウンザラインを決めると両拳を握り、紅潮した笑顔をコーチや両親のいるスタンドに向けた。日本男子にとって全米オープン15年ぶりの勝利。「勝てると思っていなかった。まだ実感がわかない」。試合後も興奮状態が続いた。
 腹筋の肉離れで1回戦を途中棄権した6月のウィンブルドンに続く4大大会本戦。ウィンブルドン後は北京五輪の1試合しか戦っておらず「練習だけで不安だった」が、最初の2セットをともに6―2で連取した。緩急をつけた多彩なショットで相手にリズムをつかませなかった。
 第3セットを落として迎えた第4セット。3―2で迎えたサービスゲームで40―0としたところで両太腿からアキレス腱にかけてけいれんが襲った。すぐにタイムを取って治療を受けたが、そこから1ゲームも与えなかった。最終ゲームもけいれんの気配を感じたが、ポイント間にストレッチしながら気力で乗り切った。
 ウィンブルドンでの経験がこたえたのか「もう棄権は絶対にできない」と考えていたという。父・清志さんは「負けるよりつらいはず。僕たちにも見せなかったけど、かなり泣いたみたいですね」と息子の苦悩を思いやった。母・恵理さんはけいれんを目のあたりにした心境を「どうなることかと心臓が口から飛び出しそうでした」と話し、涙ぐんだ。北京五輪でも腹筋痛を再発させて悔いの残る敗戦。「北京では杉山(愛)さんとかみんなから体が弱いと言われて…」。“愛の苦言”を今でこそ笑って話すが、1試合も満足に戦えない自身の体がもどかしかった。5セットを戦う体はまだ出来上がっておらず、2回戦以降に不安もある。しかし、苦しんでもぎ取った勝利が、錦織に大きな自信をもたらしたことも間違いない。

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2008年8月27日のニュース