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「がん免疫チェックポイント阻害薬」がんの発生を抑えるT細胞の働きを抑制するアンテナをブロック

[ 2025年1月27日 05:00 ]

病院内で研究が評価され賞を頂いた時にジェームズ・アリソン博士と隣の席でお話しさせていただける機会がありました!バリバリのテキサス出身のアリソン博士はハーモニカの奏者でもあり、とても気さくないい方です
Photo By 提供写真

 がん治療の最前線、米国で働く日本人医師が現場から最新の情報を届ける「USA発 日本人スーパードクター これが最新がん治療」。テキサス州ヒューストンにある米がん研究最大の拠点「MDアンダーソンがんセンター」で勤務する腫瘍外科医、生駒成彦医師のリポート第10回は、同センターで開発が進む「がん免疫チェックポイント阻害薬」についてです。

 【皮膚がん治療から発展】

 がん免疫という言葉を聞いたことがありますでしょうか。免疫とは、ウイルスや細菌が体内に入ってきた時に、白血球やその他の免疫細胞によって、それらの異物を排除して健康を保つ機能です。実は同様の機構ががん細胞に対しても働いていて、がんの発生を抑えています。特に関係しているのは白血球の中でも“T細胞”と呼ばれる細胞ですが、がん細胞によってT細胞の働きが抑えられてしまうと、“免疫回避”が起こり、がんの増殖が進んでしまうと考えられています。

 近年、このがん免疫の力を利用してがんを攻撃する“がん免疫療法”が大変注目されています。その中でも画期的な発見であった治療が“免疫チェックポイント阻害薬”です。T細胞の働きを抑えるアンテナ(がん細胞はそこを狙ってきます)をブロックしてしまうことで、免疫を再活性化する治療です。PD―1阻害薬のニボルマブ、ペムブロリズマブ、CTLA―4阻害剤のイピリムマブ、PD―L1阻害薬のデュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブなどは全部免疫チェックポイント阻害薬の仲間です。

 MDアンダーソンがんセンターに在籍するジェームズ・アリソン博士は、免疫チェックポイント阻害薬の開発者の一人。上記のチェックポイント阻害剤のターゲットとなるタンパク質のCTLA―4を発見し、その活性化を遮断する抗体を開発しました。その功績が称えられ、日本の本庶佑博士とともに、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 元々免疫療法は、その効果が高いと考えられていたメラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんへの治療として研究・開発が進みました。免疫チェックポイント阻害薬がメラノーマに対して劇的な効果を示すことが分かってから、次第に他のがんに対して応用治療されています。例えば胃がんでは、数々の大規模臨床試験が免疫チェックポイント阻害薬の有用性を示してきました。当院も参加した国際的な「CheckMate649試験」では、ニボルマブと抗がん剤の組み合わせが、抗がん剤のみの治療と比べ優位に生存予後を改善しています。

 ただ、免疫チェックポイント阻害剤は全ての胃がんに同等に効くわけではないようです。(1)dMMR(DNAミスマッチ修復遺伝子欠損)と呼ばれる遺伝子がある(MSI―Hとも呼ばれます)、(2)EBVと呼ばれるウイルスが陽性、(3)PD―L1と呼ばれるレセプターが高発現している(CPSというスコアで評価されます)などの特徴がある胃がんでは、特に免疫チェックポイント阻害剤の効果が顕著に見られます。

 特に(1)のdMMR(MSI―H)のがん(これは胃がんに限りません)に対しては劇的な効果が期待でき、MDアンダーソンの権威の一人であるマイケル・オーバーマン医師が主導した臨床研究では、35人のdMMR(MSI―H)の特徴を持った大腸がん、胃がんを含むさまざまながん患者さんらにペムブロリズマブを投与したところ、実に82%の患者で治療効果が認められ、65%の患者さんで完全寛解(顕微鏡で見てもがん細胞が全て死滅している状態)と、今までの治療では考えられないような結果が得られました。

 この結果によって、dMMRという特徴があるがんのほとんどは、もはや手術の必要もなく、免疫療法だけで治癒が目指せるものだと考えられています。

 【一昔前まで“眉唾もの”】

 ほんの一昔前までは“眉唾もの”であった免疫療法。絶え間ない研究者の努力によって開発された免疫チェックポイント阻害剤により、がん治療のアプローチが劇的に変わりました。とはいえ効果のある治療には副作用はつきもの。自由診療で行われている免疫療法には、効果の証明されていないものを勧めているクリニックもあると聞いています。特に免疫療法などの先進医療を受ける際は、大学病院やがんセンターなど機関病院への受診やセカンドオピニオンをお勧めします。

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