ドジャース・大谷はトレーディングカードの常識も変えた!1枚で4億7100万円で落札も

[ 2026年5月13日 02:30 ]

大谷のカードが300万ドルで落札されたことを伝えるトップス公式インスタグラムの投稿

 昨年12月中旬、ドジャース・大谷翔平投手(31)の野球カードがファナティクス社の競売で、300万ドル(約4億7100万円)で落札された。大谷の野球カード史上最高額を更新し、3月には日本国内でも展示された。「Monthly Shohei」5月編は、市場拡大が続くトレーディングカード業界に迫る。大谷の活躍が100年以上続く業界の活性化、新規ファン獲得に大きく貢献している。 (取材・奥田秀樹通信員)

 アリゾナ州フェニックスの老舗カードショップ「バッターズボックス」のカウンターに、店主のデービッド・セドルマイヤーさん(55)は2つの古びた箱をそっと置いた。

 トレーディング会社大手トップス社の1958年と1960年のガムパックの箱だ。どちらも「1セント(約2円)」と印字されている。「当時はこれにカードが12枚入っていた。中身はもうないけど、この箱自体がお宝なんだ」。カードがガムのおまけだった時代。この箱には現在、995ドル(約15万6200円)と800ドル(約12万5600円)の高値が付けられている。

 米カード業界の歴史は古い。1870~1890年代にタバコ会社が箱を補強するための紙として、選手の写真カードを入れたのが始まりとされる。「バッターズボックス」は1980年代初頭に創業。「80年代半ばから後半はグッデン、カンセコ、マグワイアが人気でカードブームだったね」。しかし、その熱狂は長く続かなかった。トップス社やアッパーデック社の発行枚数はほぼ無制限。希少性が薄かった。

 あれから40年。現代のカード業界は様変わりした。変えたのはファナティクス社のマイケル・ルービンCEOだ。21年に各リーグや選手会とカードのライセンス契約を結び、22年にはトップス社を買収した。80年代後半の失敗を教訓に、供給体制をテクノロジーで管理し、限定カードで希少価値を生んだ。

 その市場をけん引している存在が大谷だ。昨年12月には実際に着用したユニホームのゴールドロゴ付きで1枚限定のカードが300万ドルで落札された。米競売サイトeBayでの26年のカード売り上げは、3月時点で約3678万ドル(約57億7400万円)と他のレジェンドアスリートを引き離しトップに立つ。鑑定会社PSAのカード鑑定数でも、大谷は8万8000枚以上で1位となっている。

 セドルマイヤーさんは言う。「翔平は本当に特別だ。二刀流、劇的なWBC優勝、50―50(54本塁打&59盗塁)など永遠に語り継がれるシーンをつくってきた。人間的にも謙虚で、理想的なスポーツマン像に近い」

 大谷は売上高だけでなく、カード発行のスピードさえも変えた。3月のWBCの台湾戦で満塁本塁打を放った際のジェスチャーが似ていると話題になり、プロレス団体「WWE」のジョン・シナとのコラボカードが36時間以内に発売された。SNS全盛の現代では“ミーム化”した瞬間に価値を持つ。大谷の場合は「全ての瞬間が歴史になる」と市場に受け止められている。

 限定品に限らず、新人だった18年の大谷のカードは流通が1万5000枚以上と多いが、最近では900ドル(約14万円)以上で取引されている。24年12月時点の200ドル(約3万1400円)未満から異例の上げ幅だ。

 セドルマイヤーさんの店に並ぶビンテージカードは、長い年月をかけて価値を築いてきた年代物だ。一方、大谷は一つのしぐささえ瞬時にカードへと変える。今、業界で起きている変化の中心に、間違いなく大谷がいる。そして次の瞬間もまた、新たな“価値”として刻まれていく。

 ≪コラボでHIT新たなファン層獲得≫トップス社の代表を務めるデービッド・ライナー氏は「彼はグローバルスーパースター。その活躍は売り上げ以上に、カードというカテゴリー全体を押し上げる」と大谷の影響力の大きさを語った。

 コレクターの輪を広げる一つの方法がコラボカードの販売だ。大谷×ジョン・シナをはじめ、NBA、NFL、WWE、UEFAなど多くの競技の権利を有する同社は異競技コラボを何度も実行。ライナー氏は「そういうことができるのが我々の強み。そうやってファンを増やしていきたい」と世界中を対象としたビジネスをにらむ。

 さらなるコレクターの獲得へ。ライナー氏は「大谷×アート界」の異色のコラボも予告した。狙いは野球やスポーツに根付いていない新たなファン層の獲得。ライナー氏も「“こんなことができるんだ”って皆さんを驚かせたい」とその時が待ち切れない様子だった。(小林 伊織)

 ▽トレーディングカード スポーツ選手、アニメのキャラクター、アイドルなどをカード化したもの。希少価値の高いものは「レアカード」として専門店やオークションなどで高額売買される。米国では1930年代から普及し、トップス社、パニーニ社などがしのぎを削る。2022年8月には、ヤンキースで活躍したミッキー・マントルの52年トップス社製の野球カードが、オークション史上最高額の1260万ドル(当時約17億4000万円)で落札された。

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