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ビッグモーター刑事責任問えるか?前社長親子どうなる? 元東京地検特捜部副部長・若狭勝弁護士に聞く

[ 2023年8月14日 04:55 ]

弁護士の若狭勝氏
Photo By スポニチ

 自動車保険の保険金不正請求に、除草剤散布による店舗前の街路樹の枯死など、中古車販売大手ビッグモーター(東京)は刑事責任が問われるような問題が全国規模で明らかになっている。組織ぐるみとも言われる中、ワンマン体制を築いてきた兼重宏行前社長と息子の宏一前副社長にまで捜査のメスが入るのか。予想される展開を、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に聞いた。

 【保険金不正請求】
 損害保険各社に事故車両の修理代を水増し、請求していた同社。不必要な部品交換などのほか、極めて悪質な行為も発覚。損傷箇所を増やすため靴下にゴルフボールを入れ、振り回してぶつけるなどしたもので、器物損壊の疑いが持たれている。

 現場従業員の多くは「工場長らの指示」と説明。ワンマン体制下、現場の独断でここまで不正が広がるのか疑問視されており、さらなる上層部の関与の有無が注目される。若狭氏は兼重親子について「具体的手口でなくても、包括的な指示をしたとの証言でも出てくればアウト。それを裏付ける録音やメールなどが必要」と話した。

 同社では2018年ごろ、全国の工場で粉飾会計処理が横行していることが発覚。22年1月ごろには、工場従業員が不正を告発。しかし、宏行氏は実態調査をしなかった。宏行氏らは、工場の現場が不正常な状態にあったことは認識していた可能性があり、若狭氏は「器物損壊について、報告などの形で耳に入っていたら、不正を回避させる義務がある。何もしなかったら、それもアウト。黙認は許されない」との認識を示した。

 不正請求は5年以上前から行われ、修理件数の4割に上る可能性もあり、組織的な詐欺容疑も疑われている。「立証のハードルは高い。当事者の供述を裏付けるLINEやメール、録音などが残っていれば…」と話した。

 【街路樹などの枯死・伐採】
 土壌調査で除草剤成分が検出されたり、当該店舗従業員が散布や違法な伐採を認めるなどし、各地の自治体で器物損壊容疑で被害届を提出する動きが広がる。こちらも指示系統や報告状況などが焦点だ。

 問題の遠因と指摘されるのが、理不尽な降格人事を繰り返していたとされる宏一氏ら幹部が店舗を視察する「環境整備点検」。清掃状況は重点項目で、店舗前の雑草も問題視された。現場は戦々恐々で、若狭氏は「この点検自体が個々の事案の立証で状況証拠になり得る」とした。

 高い頻度で行われていた点検の仕切り役は宏一氏。各店舗の清掃状況を把握していたとみられており、「違法行為の報告を受けていたほか、点検時に除草剤の影響や伐採で草木が減っていることを認知していたのであれば、これも“黙認”。罪に問われる可能性がある」という。

 【LINEによる罵詈(ばり)雑言】
 宏一氏による社内統治で重要なツールだったのがLINE。従業員に「死刑」や「教育」などの言葉を十数回も“連呼”したり、「解任」をちらつかせるなどしていた内容が報じられている。

 若狭氏は、侮辱容疑や名誉毀損(きそん)容疑、脅迫容疑などに当たる可能性を挙げた上で「受け取った側が“自分は能力がない”“もう仕事を続けていけない”などと感じてしまっていたのが明らかで、LINE上のやりとりなど証拠も残っている。立件しやすい」とした。

 恣意(しい)的な降格処分も問題化。経営陣や上司に忖度(そんたく)する、いびつな企業風土が生まれた。中心にいたのが宏一氏。弁解機会がなく、処分理由も明確に伝えられないまま降格された工場長は、22年までの3年間で約50人にも及ぶ。若狭氏は刑事罰には問えないとし「故意に労働者の権利を侵害した不法行為で、損害賠償請求される可能性がある。不当な降格を取り消す必要もある」と話した。

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