復興の象徴から聖火リレー Jヴィレッジの今

[ 2020年1月6日 05:30 ]

東京五輪聖火リレーのスタート地点となるJヴィレッジ。後方にある白いドームが新設された全天候型練習場
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 “復興五輪”と銘打たれた2020東京五輪は、東日本大震災から10年目に突入する今年7月24日にいよいよ開幕を迎える。本格的な動きとしては、3月26日に聖火リレーが復興の象徴ともいえるJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)からスタートする。震災直後は福島第1原発事故の事故対応拠点となっていたJヴィレッジの今は?そして、国内外が注目する福島第1原発の今は?現地に足を運んで、現状を確認した。 (石川 高伴)

 そこにはかつてのJヴィレッジの姿があった。センター施設の正面入り口から真っすぐ進み、そのまま施設外へと出ると、視界に何面ものサッカー練習場が飛び込んでくる。緑がまぶしい、サッカーの聖地が広がっていた。

 ピッチの数は震災前は計12面(人工芝1面)だったが、現在は計11面(人工芝3面)に減った。かつての2面分のスペースを使って屋根付きの人工芝ピッチである「全天候型練習場」を造ったからだ。その全天候型練習場の隣にある第9ピッチ(人工芝)が、3月26日の聖火リレーのスタート地点となる。震災のあった11年の女子W杯で世界一に輝いた「なでしこジャパン」のメンバーがここから走りだすのだ。

 震災直後、Jヴィレッジは福島第1原発事故への対応拠点となり、2年後の13年には東京電力の福島復興本社へと姿を変えた。天然芝のピッチ3面には砂利が敷き詰められ、1面につき800台、計2400台分の駐車場として使われた。施設には白い防護服を着た作業員がせわしく出入り。06年にジーコ・ジャパンが合宿を行ったスタジアムには作業員1000人収容の仮設寮が建設された。サッカーの聖地は、もはや死んだも同然だった。

 だが、13年9月に五輪の東京開催が決定し、再生計画がスタート。震災から8年1カ月後の昨年4月にJヴィレッジは見事に復活した。かつて団体専用だった宿泊施設もシングルルームを増やして新宿泊棟として稼働。さらに、楢葉町の敷地近くに全長200メートルのホームを備えた常磐線のJヴィレッジ駅も開業した。ラグビーW杯のアルゼンチン代表も事前合宿を張るなど、その奇跡的な復活劇はまさに復興の象徴。世界に復興をアピールするにはもってこいの舞台でもある。

 だが、その世界の目の一部はJヴィレッジではなく、福島第1原発に向けられている。本当に安全、安心なのか?この問題は避けて通れない。そのため今回、第1原発の敷地内を視察し、現状を体感してきた。第1原発の敷地内を視察するのは13年2月以来、2度目。当時は防護服こそ着用しなかったが、バスの中からしか視察はできなかった。だが、今回は2号機建屋の山側100メートルの高台に歩いて行くことができた。それも防護服なしで約20分間も滞在できた。

 7年前はバスの中から計測して900マイクロシーベルト毎時だったその場所は、現在は120マイクロシーベルト毎時。敷地内のあらゆるのり面がモルタルで完全に覆われ、建屋周辺も厚さ5センチの鉄板を敷き詰めて放射線を遮断したことで線量を下げることができたという。4号機建屋の正面にも降りたが、鉄板効果で線量は10マイクロシーベルト毎時だった。東電広報によると、東京ドーム75個分の広さの敷地の96%のエリアで現在は防護服なしでの作業が可能となっているという。約7時間の視察による被ばく線量は30マイクロシーベルト。胸部エックス線撮影での被ばく線量が約50マイクロシーベルトであることと比較すれば、敷地内環境の変化が著しいことだけは間違いないだろう。

 安倍晋三首相は五輪の東京招致に際し、汚染水問題を「アンダーコントロール」と表現したが、実際はどうなのか。東電の担当者は「今は処理水もコントロールできてると思っているし、そうしないといけない。残念ながら我々の説明がちゃんと伝わっていない国があるので、しっかりとした情報を発信するしかない」と話した。福島県の内堀雅雄知事(55)も「福島を巡ってさまざまな誤解、風評があるのも現実だが、(五輪は)そういう風評を払しょくして、正しい福島の姿を知っていただく大きな機会になる」と強い信念を示している。受け取り方はさまざま。だからこそ、正確な情報発信の継続で、信頼を勝ち取るしかない。

 《労働環境改善へ、激安大型食堂やコンビニも設置》原発敷地内の労働環境を改善するため、東電は15年に山側のエリアに大型休憩所を建設した。中には大食堂があり、2種類の定食、丼もの、麺類の4種類から選べる。しかも、すべて390円と激安だ。いずれも近隣の給食センターから運び込んでいるもので、もちろん福島産の食材を使っている。担当者によると「作業柄、少々カロリー高めです」とのこと。構内にはコンビニもあり、作業員のストレス軽減を図っている。また、作業場の移動には自動運転EVバスも導入され、かつて免震重要棟に集中していた業務も新事務本館を建設して分散化している。

 《「廃炉資料館」に貴重な資料を展示》原発周辺の住民などを除き、福島第1、第2原発とも一般視察は受け付けていない。だが、廃炉への取り組みや原発の現状を広く理解してもらうため、東電は18年11月に「廃炉資料館」をオープンした。第2原発のある富岡町の国道6号沿いにあり、震災当時の状況を説明するドキュメンタリー風ビデオを上映したり、敷地内の作業員が使用しているマスクや防護服なども展示している。 

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